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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 5
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「ありがとうございます」
「バーデル教会の大司教様は現在、アリアシエルへと(おもむ)かれていますので、ご挨拶は次期大司教様にお願いします」
「心得ました」

 バーデル王国は大戦後、アリア信仰にも門を開いたが。
 互いの関係が良好かと言えば、そう上手く転がる話でもないようだ。
 都市の片隅に、商業施設より少し大きめな土地を預かっているくらいで、その規模はアルスエルナ王国に置かれた中央教会の半分にも満たない。
 アルスエルナ王国での地方教会くらいかな。
 それでも、バーデル王国に置かれた中央教会には違いない。

 人手不足気味な地方教会では滅多に設置されない受付にて、許可を貰い。
 目指すは、次期大司教様がおられる礼拝堂。
 教会の構造は、自分が預かっていた教会とほぼ同じだ。
 アリア信仰の枠内で設計されていれば当然だけど。
 大きく開いた扉を潜り、左右二列ずつずらりと並ぶ長椅子六脚に挟まれた赤い絨毯の上を、祭壇へ向かってまっすぐに歩く。

「…………?」

 自分は、他国の信徒と交流を持つ前に地方へ赴任した。
 バーデルの現大司教様とも次期様とも、直接お会いしたことはない、筈。

 なのに、全身白装束の男性が低い階段の上から自分をじっと見ている。
 他に人影は無いし、彼が次期様なのだろうが……何故か、探られてる?

「……この教会に来られるのは、初めてですよね? 貴方の、お名前は?」

 少し掠れた、低い声。

「はい。アルスエルナ王国から参りました、クロスツェルと申します」
「クロスツェル。貴方は、バーデル王国の生まれではありませんか?」

 黒い色素は現代のバーデル国民を圧倒的多数で占めている移民の特徴だ。
 髪を見れば、出身地の想像は容易い。
 が、彼が見ているのは、自分の髪ではなく目、な気がする。

 自分の虹彩部分は、アルスエルナ人である父親から受け継いだ金色だ。
 髪ならともかく、目の色でバーデルとの繋がりを連想するとは思えない。
 次期様は何故、自分の目を見て、こんなことを尋く?

「確かに、その通りですが」
「! では、私の顔に見覚えはありませんか!?」

 次期様が妙に興奮した様子で階段を駆け降り、自分の手前で止まった。
 顔と言われても、と思いながら、彼の頭から足先までをじぃっと見つめ、首をひねる。

 腰の辺りまでまっすぐ伸びる黒髪は、見るからにさらさらで光沢があり。
 人懐っこい犬を思わせる黒い目は、成人男性にしては少し大きい。
 そのせいか、顔立ちは子供っぽく、見方次第ではまだ十代。
 背はアーレストと同じくらいで自分より頭一つ分高く、近くに居られると年下の少年に見下ろされている感じがして、なんとなく複雑な気分だ。

「すみま
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