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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 5
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はありませんか!?」
 次期様が妙に興奮した様子で階段を駆け降り、私の一歩手前で止まった。
 顔……と言われても……と思いながら、彼の頭から足先までをじぃっと見つめ、首を捻る。
 腰まで伸びる黒髪はさらさらで光沢があり、黒い瞳は成人男性にしては少し大きい。その所為か顔立ちは子供っぽく、見方次第ではまだ十代。身長は私より頭一つ分高く、近くに居られると見下ろされてる気になって……複雑だ。
 「すみません。多分、初めてお会いすると思うのですが」
 「……そう、ですか」
 次期様の肩が目に見えて落ちる。
 そんな、棄てられた仔犬みたいに潤んだ目で見られても……
 ……あれ?
 ちょっと待って、この感じ。
 「失礼しました。では、バーデルへの巡礼を……」
 しょんぼりした背中を向けられ、一つの面影が記憶に輪郭を浮かべる。
 まさか

 「テオ?」

 「……!!」

 黒い髪がぶわっと広がり、宙に泳ぐ。
 振り向いた瞳を濡らす……綺麗な涙。
 「やっぱり! やっぱり、生きてたんだね! 良かった……また会えた!」
 勢いはあまり無くても、体格は猪達と同等だ。どかーんとぶつかりしがみ付かれ、一瞬息が止まる。
 茫然とする私の肩を抱いて
 「ごめん。何もできなくて、ごめんね……っ」
 あの時と同じ涙。同じ言葉。

 ……生きてた。

 テオは……生きていたのか……。
 

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