オペラセリアのエピローグ 5
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突然死ぬ可能性が常に寄り添っている。だからこそ、刹那触れ合った絆と共に不確定な未来を歩みたいと願うのです。ごく自然な流れだと思いますが?」
「お前はもう決まってるじゃないか! 自分で決めたんじゃないか!」
「はい。残り少ないからこそ、その総てを貴女との時間に使いたいです。触れるなと言うなら一切触れません。旅を望むなら何処までも。教会には戻れませんが、穏やかな生活をご希望でしたら家を探しましょう。ですから、私の最期までは一緒に居てください」
ロザリアの頬に涙がとめどなく溢れては滑り落ちる。
非道い事を言っているのは承知しています。
でも、これが私にできる償いであり……どうしようもない我が儘だ。
「……約束だなんだとか言って、結局自分の事しか考えてないだろ、この卑怯者! 最低莫迦男! 結婚なんかするか阿呆! もう良い。お前は、私の奴隷として生きて死ね!」
「奴隷ですか?」
「一生私の傍に居て、笑って、飯作って、下らない話しをして、それから死ね!」
「……籍に名前を連ねるか連ねないかの違いですよね?」
「お前如きに私の名前の隣は勿体無い!」
「それは残念……」
「うっさい! バカッ」
私が名を付けた少女は、両手でポカポカと私の肩を叩きに叩いて……首を絞めるつもりかと思うほど強く腕を回し、大声で泣いた。
私も彼女の背中を抱き締めて、柔らかな髪をそっと撫でる。
「……お帰りなさい、ロザリア」
ある日、教会から突然いなくなってしまった愛しい少女。
今度こそ逃げない。
貴女を幸せに微笑ませてあげたい。
一緒に居てください。
奴隷でも夫婦でも、確かな繋がりが有れば良い。
愛しています、ロザリア。私の女神。
私にとっての「必要不可欠なもの」……。
「バーデルの一番都市?」
「ええ。私は泉へ向かう途中の村以降、居住地に痕跡を残していません。巡礼を目的に頂いた許可証なので、何処かの教会には顔を出す必要があるのですが……地理と経過時間と行動を考慮すると、中央教会辺りが一番自然なんです」
「ふーん……別に良いけど」
涙が乾くのを待って立ち上がった私達が見上げる空は、黄色味が強い赤色。
明日は晴れるかな。
「んじゃ、行くか」
長衣の膝部分に付いた砂を払い「ん。」と右手を差し出すロザリア。
「……お願いします」
触れなくても飛ばせるでしょうに、とは言わないでおこう。私もちゃっかりしている。
細くて柔らかい手を取った瞬間、周囲の景色が変わる。
朽ちた神殿は、目の前に聳える巨大な石壁へ。背後には、まばらに伸びる樹木と往来が激しい街道を遠く望む平原。
人の動きから察するに、此処は一番都市の外壁の真横か。
「私は此処で待ってる。夜になる前に戻って
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