開戦前日;side 八葉重エリ
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ことを隠して登校している者はいるし、実は魔人なのではないかと疑われている人間もいる。
だが、今まで家杉が魔人なのではないかと疑った者は誰一人としていなかったのだ。
能力を持っているなんて情報は入らなかったし、魔人のように頭のおかしい性癖や思想を持っているとは思えなかったし、魔人のような常軌を逸した行動など起こしたことはない。それどころか誰に対しても優しく接し、マネージャーとしての仕事も完璧にこなす一方で気の利く心遣いも忘れない姿は男子の理想とする清純な女子そのものだった。
だから、家杉が魔人だと言われても全くピンとこないのだ。
それに、その時野球部員の一人が家杉が魔人なのかを聞いたとき、当の彼女は微笑みを崩さずに「どうでしょうね?」と答えただけだったので今でも家杉が魔人だったのかどうかは謎だ。
その後も家杉は八葉重や留田等の友人や野球部員達を不思議な力で癒し続けた。彼らは家杉に感謝しつつも彼女が番長グループなどに目をつけられることを恐れ、無闇に能力を使わないように言い、外部に知られないように口を閉ざすように言った。
「外部には漏らさないように言ったのに‥‥」
留田が呻く。所詮は十代の学生。全員が完璧に口を閉ざすことなど出来なかったのだろう。
「くっそ! 誰が言いやがったんだ!」
「落ち着け。今そんなこと言っても仕方ない」
苛立つ留田を狩場が宥める。
しかし、番長グループに拐われたという説が濃厚になったところで八葉重達が何かできる訳でもない。
屈強な魔人の揃う番長グループに人間の女子高生九人が挑んだところで結果は見えている。
そんなほとんど諦めかけていた彼女達に声をかける者がいた。
「おや? 何をしているのかなお嬢さん達。この学園はもうすぐろくでもないことになるから早く帰った方がいい」
振り返った九人の女子は時代錯誤な格好をした美形の上級生と、それに付いて歩いている眼鏡の似合う知的な印象を持つ同級生を見た。
「鵺野さん!」
「チグリスさん!」
津栗が鵺野蛾太郎の名を呼び、紺須田がチグリスの名を呼んだ。それを見て疑問に思った暮古里が二人にこっそりと聞いた。
「し、知り合いなの?」
「うん。生物部の部長」
「図書委員の先輩」
疑問を持ったのは暮古里だけではない。
鵺野とチグリスも一般女子高生がハルマゲドンを控えた学園に遅くまで九人も残っていることに疑問を抱き、その疑問についての答えを比江留から聞いているところだった。
「なるほど。事情はわかったが、残念ながら番長グループに家杉さんはいない」
「え?」
「小生も実は番長グループに属する身でね。番長グループがそんなことをしていたらわかる」
もっとも番長グループではなく、番長グループ内の個人が勝手にやった
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