第二百三十五話 動かぬ者達その八
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「御主の今の言葉は」
「同じ伊賀者にしてもですな」
「何故交わりがないのじゃ」
「流派も何もかもが違いまして」
「百地家の流派は何じゃ」
「百地流といいます」
それが彼等の忍の術だというのだ。服部は石川に対しても百地の者達について話した。彼等がどういった者達か。
「妖術や幻術、それに毒等を多く使う」
「そうした術か」
「そうです、そうした術を使い」
そしてというのだ。
「我等と交わることもです」
「ないのか」
「はい」
「ふむ。おかしな話じゃな」
「百地家の下には石川、楯岡、音羽と三つの上忍の家がありますが」
服部は彼等のことも話した。
「その者達ともです」
「交わりはないか」
「そうです、むしろ敵に近いです」
同じ伊賀者同士であってもというのだ。
「住んでいる場所も違いましたし」
「何もかもがか」
「違っていてです、お互いに交わりは最初からなく」
「確か伊賀に入ったのは服部家の方が後じゃな」
「その時から交わらず。お互いに警戒し合い」
「敵同士となっていたか」
「殺し合うことはなけれども」
流石にこれはなかった、そうしたことまではなかったというのだ。だが。
それでもだったとだ、服部は話した。
「同じ家に仕えることはなく」
「そしてか」
「いがみ合ってきました」
「ではこの道も」
「教えておりませぬ」
百地の者達とは、というのだ。
「それ故ご安心下さい」
「百地という者は何者なのじゃ」
家康は怪訝な顔で服部に問うた。
「妖術等を使う者達とはわしも聞いておったが」
「はい、それがしも実は」
「よく知らぬか」
「我等どころか誰も入らぬ様な場所に村がありますし」
「忍の者でも入られぬか」
「容易には」
そうした場所にだ、百地家の者達は住んでいたというのだ。
こうした話もしつつ家康一行はひたすら進んでいた、そしてだった。
主従は獣達には気をつけつつ先に先にと進み続け何とか誰も死ぬことなく三河に入ってだった。駿府まで辿り着けることが出来た。
だが闇の中ではだ、あの者達が怪訝な顔をしていた。
「妙じゃな」
「うむ、徳川家康は何処に行った」
「確か堺にいたのではないのか」
「すぐに堺にも人をやり追いじゃ」
そしてというのだ。
「その命を貰うつもりだったが」
「何処に行った」
「堺にはおらぬのか」
「では一体何処に行った」
「何処に消えた」
怪訝な声で口々に言っていた。
「あの者達は」
「早く命を奪わねば」
「徳川家康もな」
「あの者も消しておかねば」
「あの者も厄介な者じゃ」
「我等の邪魔じゃ」
そう思うからこそというのだ。
「何とかここでな」
「消したいが」
「何処に行った」
「何処に消えた」
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