巻ノ二十四 鎌倉その五
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「各地の名物を食するのもな」
「それもまたその国を知ること」
「そういうことになるでyそうか」
「ならばよいかと」
「それで」
「そうじゃな。しかしどうも御主達」
十人全員を見てだ、幸村は少しだけ苦笑いになって言った。
「食することが好きじゃな」
「否定は出来ませぬ」
「実際食うことは好きです」
「美味いものを多く」
「そして酒も」
「そうじゃな、皆食うし飲む」
どちらも、と言った幸村だった。
「相当にな。しかしそれは拙者も同じこと」
他ならぬ幸村自身もというのだ。
「ならばな」
「我等と共にですな」
「この鎌倉でも食いましょう」
「海老も鮑も鯛も」
「そして酒も」
「そうしようぞ」
幸村は家臣達の言葉に笑って頷いた、そしてだった。
その鮑も鯛も刺身で運ばれて来た、どれも見事に切り揃えられている。それ等を刺身醤油で食べるとだった。
「ううむ、これは」
「見事」
「新鮮でしかも程よい大きさで斬られておる」
「醤油も刺身もいい」
「これは美味」
「全くじゃ」
幸村も微笑んで言う。
「これは実によいものじゃ」
「どれもですな」
一行の傍に立っている親父も微笑んで応えた。
「見事だと」
「御主が切ったか」
「いえいえ、倅です」
親父は幸村に微笑みのまま答えた。
「この刺身を切ったのは」
「倅殿がか」
「はい、切りました」
「そうか、よい倅殿を持ったな」
「包丁を持たせたらもうそれがし以上で」
「これ程までのものを作るのじゃな」
「左様です」
まさにというのだ。
「自慢の倅です」
「そうじゃな、これ程までのものとは」
「そしてです」
「そしてか」
「その海老と鯛の頭ですが」
刺身の皿にあるその二つもというのだ。
「これからどうでしょうか」
「頭をか」
「それを味噌に入れてだしにします」
「ふむ、味噌汁もあるか」
「それもどうでしょうか」
こう幸村達に勧めるのだった。
「どちらも」
「ではな」
「はい、召し上がられますな」
「そちらもな」
幸村はこう親父に答えた、そして実際にだった。
そのうえでだ、刺身の後はだった。
一同にその海老と鯛の頭を入れてそれ等からだしを取った味噌汁が来た。その味噌汁もまた、であった。
「いや、これも」
「この味噌汁も」
「かなりですな」
「美味いですな」
皆で言うのだった。
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