巻ノ二十四 鎌倉その二
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「関東はな」
「みちのくは、ですか」
「それでもですか」
「あちらを治められるかはですか」
「わからないですか」
「近頃奥羽では伊達家が大きくなろうとしている」
この家のこともだ、幸村は話に出した。
「若き主になられてな」
「伊達政宗殿ですか」
「何でも隻眼だとか」
「名付けて奥羽の独眼龍」
「そう言われていますな」
「時として苛烈にもなられる方と聞く」
その政宗のこともだ、幸村は話した。
「奥羽はあの方が治められるやもな」
「奥羽の大名家を倒していき」
「そのうえで」
「その伊達家に勝てるか」
北条家がというのだ。
「果たして」
「家の力は北条家の方が上じゃ」
幸村はまずは北条家のことから話した。
「関東の覇者であるだけにな」
「五万、六万の兵を動かせますし」
「やはり北条家は強いですな」
「織田家も攻めようとしていましたが」
それで上野に重臣の一人である滝川一益を関東管領に任じて必要とあらば、としていたのだ。だが本能寺の変でそれもなくなり滝川も北条家との戦に敗れ彼の本来の領地である伊勢にこの前戻ってきたところだ。
「北条は強い」
「滝川殿も敗れましたし」
「甲斐、信濃にも食指を伸ばしております」
「やはり相当な強さがありますな」
「しかし聞くところによると伊達家の主となった政宗殿は」
幸村は今度は伊達家のことを話した。
「相当な方で家臣もおられる」
「片倉小十郎殿に伊達成実殿」
「そのお二人ですな」
「他にもおられる」
政宗の臣はというのだ。
「あくまで聞いたところじゃがな」
「北条家の方が力は強く」
「人は伊達家ですか」
「では両家がぶつかれば」
「その時は」
「少なくとも北条家が東国を統一出来るかはな」
そのことはというのだ。
「関東はともかくとしてな」
「奥羽も入れるとですか」
「わからない」
「それは難しいやも、ですか」
「関東だけを考えておられる様じゃがな」
幸村は北条氏政のその考えも読んでいた、そのうえでの言葉だ。
「それは出来るであろう、しかしあと十年はかかるか」
「北条殿が関東を一つにされるにしても」
「それだけかかりますか」
「十年」
「長いですな」
「その十年の間に間違いなく羽柴殿は西国を全て手に入れられる」
幸村はこのことは言い切った。
「箱根から西をな」
「その全てをですか」
「一つにされますか」
「そしてそのうえで、ですな」
「次は」
「そうじゃ、西国の後は東国じゃ」
そちらにだ、秀吉は目を向けるというのだ。
「そしてな」
「東国でもですな」
「羽柴殿が一統に向かわれ」
「北条殿もですか」
「そうなるであろう、そして如何に北条家が強くとも」
関東の覇者であろうとも
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