一章
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夜はいい。やる気のない月の光も、涼しい風も心地いい。
自己紹介が遅れたな。俺の名はゼロ。そう呼ばれている。というのも、俺は俺の本当の名前を知らない。俺にはあの日以前の記憶が一切ないからだ。
あの痛みと血の臭いに満ちたあの日以来の
あれから俺は過去を探している。無駄といえば無駄なんだろうが、放っておくことできねぇだろ?あれほど俺を死に近づけた奴を野放しで許すなんてよ。そんな心優しいやつじゃねぇよ、俺は
といっても正直、まったく巧いこといってねぇ。あの傷から回復して動けるようになって、俺はいよいよ俺を探しに行こうと思ったんだが……その時には既に俺は知れ渡っていた
大犯罪者。魔王ゼロとして。
おかしいだろ?理解できねぇよな。できねぇけど、あり得ない話ではない。なんせ俺には記憶がないから、前にやったことも名前も知らない。何一つな。
でも、だからといって、多額の賞金首になるのも大犯罪者になるのも四六時中追い回されるのも許容はしない。どんな犯罪をおかしていようが、罪の意識の欠片も感じてねぇのに、決まりきったルールなんぞに裁かれるつもりはねぇんでな。
それに、犯罪者になったお陰で、俺を知っているやつを探すのも、普通に旅をするのもできなくなったわけで。磔にされて処刑されるレベルくらいのひどい目にはあってる。自分探しよりも逃亡生活といったほうが正しい気がするし……やった覚えがないにしては上等な罰が下ってるだろ。
あ?記憶をなくした理由?
それは簡単だ。ティナの代償。俺の悪魔のティナは、俺に力と呼び名を与えた代わりに記憶をまるごと奪っていきやがった。
まったく、不条理だよな?酒しか飲めないとか、泳げないとか、免疫がないとか。奪っていくものがそれぞれなのも理解はしているが、記憶をもっていかれたらティナを得た理由もなんもわからねぇじゃねぇか。ある意味、一度殺されたようなもんだろ。少なくとも俺はそう思っている。
俺を奪われたってな。
まぁ代償は高いが、俺のティナの能力値は高い。変形型特有の肉体強化に飛翔能力。傷の回復力はもちろん、力も体力も人並みではない。なによりも翼だ、翼。空は良い。基本的には静かだし生き物の数も少ない。こいつがあるから、俺はまだ捕らわれてねぇんだし。
さて、一通りの説明が終わったところで現在の話をしようか。実は呑気にしている暇はない
おっと
ほらな、翼をかすめてきやがった
「「大犯罪者ゼロ!止まりなさい!!お前は既に包囲されている!!!」」
やかましいわ
囲まれるのは初めてじゃねぇよ
「「罪を改めるのだ!!」」
なにが改めろだ。死ねって言ってるようにしか聞こえねぇよ
ごつい飛空挺に守られて、ぎゃんぎゃん喚いて楽しいか?
は。笑える
「
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