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第一章
不眠症
三島総一郎は今悩んでいた。そのことをだ。
周りにもだ。困った顔で話すのだった。
「最近寝不足だ」
「寝不足?」
「寝不足なのかよ」
「そうだ」
こうだ。寝不足の割りにはやけに強い声で話す。茶色の癖のある、妙に髪の毛の質が硬い髪を後ろだけ短くして束ね前と横は短くしている髪型だ。
顔は精悍で眉は黒くしっかりとしている形だ。身体はすらりとしているが筋肉質でありしかも背はわりかし高い。その彼がこう言うのだった。
「拙者は今それで悩んでいるのだ」
「だから御前なんで一人称拙者なんだよ」
「何時の時代だよ」
「ううむ、おかしいか」
一人称に言われてだ。少し戸惑いを見せる彼だった。
しかしすぐにだ。こうクラスメイト達に返した。
「しかしこれは昔からだからな」
「まあだったらいいけれどな」
「別にそれで俺達が困ることでもないし」
「けれど。それで何だ?」
「悩みって何だ?」
「寝られないのだ」
つまりだ。不眠症だというのだ。
「最近それで悩んでいる」
「コーヒーの飲み過ぎか?」
「それじゃないのか?」
クラスメイト達はだ。まずはそれではないかと察した。
「夜に飲むなよ」
「あれは結構来るからな」
「いや、コーヒーは飲んでいない」
そうではないとだ。本人は言う。
「拙者は緑茶派だ。コーヒーは飲まぬ」
「まあ緑茶もカフェイン入ってるけれどな」
「それでもコーヒーじゃないか」
「それはないか」
「そうだ。コーヒーではない」
あらためてだ。それではないというのだ。
「そしてだ。思い当たることもない」
「恋患いか?」
「それでもないのか?」
「今好きなおなごはおらぬ」
昔の言葉で言い切った。
「残念ながらな」
「まあそんな昔の口調の兄ちゃんに惚れられてもなあ」
「ちょっと困るな」
「そうだよな」
クラスメイト達は彼の外見ではなくその口調から話した。確かに外見はいい。七つボタンの制服、八条学園高等部の制服の一つだが予科練をイメージしたその制服も似合っている。しかし言われるのはその口調だった。
「サムライハイスクールみたいでな」
「ずっとあの熱い調子の感じがしてな」
「暑苦しいからな」
「どうしてもな」
「言うのはそれか」
総一郎としてもだ。そう言われると憮然となる。
「拙者は暑苦しいのか」
「ああ、暑苦しいな」
「口調が性格にも影響してるしな」
「正直言って暑苦しいな」
「年がら年中真夏だな」
とにかくだ。暑いというのだ。その話をしてからだ。
クラスメイト達は彼にあらためて問うた。
「で、不眠症か」
「それでどうしたんだ?」
「本当に何があったんだよ」
「悩
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