暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
もう一つの決着
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息を吐き出した後、岩山の上に身体を投げ出したままで、少女は力なく笑った。傍らのヘカートのストックを労わるようにに、労うようにそっと撫でる。
―――ありがとう。
そうして、しばし戦闘の余韻に浸るように目を閉じようとした。
その、寸前。
ぱちぱちぱち、というパラついた拍手の音でシノンは跳び上がらんばかりに驚いた。
「いや〜、さっすが《
死神
(
シムナ
)
》。スコープなしの狙撃なんて、普通なら不可能よ」
だが、どこかイントネーションが異なるその幼いソプラノを聴き、全身が再度弛緩する。
起き上がるのも億劫で、目線だけ向けて口を開いた。
「……あれは狙撃じゃないわ。撃たなかったもの」
「撃ったら当たってた」
当のシノンの言すら即答で否定するのは、二つの小さなプレイヤーだ。
「何の用?《戦争屋》」
「BoBの戦場で会って、何の用はないでしょーが。……ま、今だけは違うけど」
「……は?」
さすがに怪訝な思いを抱き、シノンは上体を起こした。
そんな少女を見降ろすのは、GGOでは絶滅危惧種と言ってもいい二人の少女のアバター。お揃いのブロンドをそれぞれ束ね、アクセントにしているその背格好は似通っていて双子にしか見えない。
リラとミナ。
前大会の予選でどちらともシノンの手によって敗退したが、GGO歴だけで言えばシノンよりも古参に当たる。それゆえにプライドをいたく傷つけられたのだろう。予選で敗れて以降、やたら突っかかってくるようになったのだ。
そんな二人がバトルフィールドのド真ん中で寝っ転がっている自分に話しかけるだけでも不自然だが、戦わないとなればもはや怪談に近い。
警戒を通り越して心配になってしまうシノンだったが、対する双子はシリアスな顔を崩さずに――――腰を折った。
「え……は!?」
「お、お願い、シノンさん」
「アンタにしか、頼めないことがあるの」
狼狽する少女の声など届いていないように、極めて真摯で、極めて真剣に、リラとミナは言葉を紡いだ。
「「撃ってもらいたい一弾がある」」
矜持も誇りもかなぐり捨てて、少女達はただ願い、乞う。
己が世界を取り戻さんがために。
世界の敵を討ち滅ぼさんがために。
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