暁 〜小説投稿サイト〜
ラブライブ Novels of every season
触れ合うほどの距離で
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[1] 最後


「ただいま……って、誰もらへんのやけどな」

 扉を閉める音が、やけに耳に響く。
 まるで自分がこの世界から隔離されたような、そんな感覚にさえなってしまう。
 らしくもない。一人になる事なんて、すでに慣れていたはずだったのに。
 靴を脱いで部屋へ上がる。足の裏から伝わる温度は、まるで氷のように冷たかった。
 それもそのはずだ。
 季節は冬、暦では十二月、日付は二十四日。

「はぁ……なにやとんのやろ、ウチ」

 最近独り言が多くなってきたような気がする。
 ある少女と距離を縮めたいと思い、とっさに喋ったこのエセ関西弁も、いつしか板についてきていた。
 実際大阪で暮らしていたこともあるのだから、似非ではないのだが。

 彼女の名前は東條希、通称「のんたん」
 かつて、音ノ木坂学院を廃校の危機から救った九人の少女。
 彼女らはスクールアイドルグループ「μ´S」として活動を行い、その活動の幅は世界へと広がる程だった。
 しかし、三年生の希と、同じく三年生の矢澤にこ、絢瀬絵里の卒業を機にμ´Sは解散。
 彼女らの出した、彼女ら自身が見つけた「答え」は、同世代の女の子だけではなく、多くの人達の心に残った。

 大学へと進んだ希は、考古学を専攻。他の二人も、それぞれ別々の道を歩んでゆく。
 一年目の夏、彼女らは久々に九人で集まり、あの頃のようにたわいないお喋りに花を咲かせる。

「そういえば、にこちゃんと真姫ちゃんって、最近会ってるのにゃあ?」

「ヴェエ!」

「は、はぁ?なに言ってんのよ!にこはアイドル活動で忙しいし、真姫ちゃんだって来年は受験だからって中々時間が取れないから会えてないわよ」

「はぁ?なによそれ。私はこの前会おうって言ったのに、にこちゃんが急に予定入れちゃうから結局会えなかったんじゃない」

「な、ぬぁんですってぇ!急なオーディションの話があったから行こうとしたけど、真姫ちゃんと会えなくなるのは嫌だからそっちに行ったのに、オーディションの方が大事なんだから行ってきなさいって言ってくれたのは真姫ちゃんのほうでしょ!」


 夫婦喧嘩は犬も食わぬとはこの事だろう。
 変わらぬ二人のやり取りを、希は微笑ましく見つめる。
 他のメンバーはというと、花陽と凛も相変わらず仲良し。花陽はアイドル部の部長として、皆の引っ張っているみたいではあるが、お決まりのあの台詞は今だ健在のようだ。
 μ´Sの発起人である穂乃果は、生徒会長としての職務をなんとか全うしているというような様子。
 頼りになる幼馴染の二人、海未とことりもいるし、彼女ならどんな困難にだって立ち向かって、最後は乗り越えていくだろう。
 希はそれを間近でみていたのだから、予想ではなくもはや確信に近いものだ。
 卒業を
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