暁 〜小説投稿サイト〜
RSリベリオン・セイヴァ―
第十五話「その憧れは、歪みとなる」前編
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
「私に、狼君の看病をさせてください……」
「……わかった。もし、彼が目を覚ましたら知らせてくれ?」
ヴォルフは、弥生の内心を悟って静かに微笑んだ。
「狼君……」
周囲は消え、彼女と狼の二人きりになった。その後、弥生は狼の体を拭いて寝巻を着せ、額の包帯も巻き替えた。そうしたことを繰り返しながら、時刻は日が暮れて暗くなり始めていた。
「……」
弥生は、一向に目を覚まそうとしない狼の頭を優しく撫でた。このまま、彼が一生目を覚ましてくれなかったらどうしようと不安が募っていく。しかし、今の彼女には狼の回復を待ちながら看病し、見守るぐらいしかできることはなかった。
「……狼君、ちょっと席をはずしますね?」
彼女は、とりあえずこの場を後にトイレへ向かった。医務室の扉を静かに閉じ、そして蛍光灯が照らす廊下を歩いていった。
――もし、このまま目が覚めなかったら、魁人さんに相談するしかないよね?
一様、太智たちが蒼真と魁人に連絡しているため、もし様態が悪化したら冷静にサポートしてくれるそうだ。
――狼君……
だが、そんな弥生の背後へ忍び寄る何者かの気配が近づいていた。それは、彼女が振り返った頃にはもう遅かった。
「天弓侍弥生だな……?」
「あ、あなたは……ラウラ…」
「貴様には悪いが……」
そして、廊下一帯に悲鳴が走った。その悲鳴は、医務室に眠る狼の耳元までもわずかだが聞き届いた。そして、それに反応したかのように狼は勢いよくベッドから起き上がり叫んだ。
「弥生ッ!!」
――ここは……!?
先ほどまで、アリーナでラウラの攻撃を受け続けていたのだけは覚えている。しかし……
「弥生!?」
それよりも、先ほどの悲鳴は彼女のものだ。俺は、廊下をすべるように走りだし、そして目の前で横たわる彼女の姿を見つけた。
「弥生!?」
俺は、弥生を抱え起こすと必死に揺さぶった。すると、彼女は唸りながらゆっくりと目を覚ましてくれた。
「ろ、狼君……?」
「大丈夫か!?」
「私は大丈夫……狼君、目を覚ましたんだね? 良かった……」
急に涙ぐむ弥生だが、俺はそんな彼女の首元に付けられた謎の首輪に気付く。
「弥生、それは……?」
「あれ? 何だろ……」
弥生の首につけられた黒く、怪しげなその首輪は、不気味に俺を見つめていた。


[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ