第十五話「その憧れは、歪みとなる」前編
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「よくも、同士を傷つけてくれたな? 命を持って償ってもらうぞ?」
「くぅ……」
苦虫を噛みしめたかに、ラウラは食いしばりながら背後のヴォルフを睨んだ……が。
「お前たち! 何をしている!?」
突如、背後から千冬の怒号が聞こえた。大股でドスドス歩いてくる。
「太智が騒いでいるのを見て、何があったのかと思って来てみたら……何の騒ぎだ!?」
――チッ……!
殺しそこなったことに、ヴォルフは苛立つもすぐに冷静と平然とした表情を保って上手な嘘を千冬に話した。その後、千冬はラウラを連れて去ってしまった。
「狼……しっかりしろ?」
「……」
しかし、狼は何も反応しない。
「いったい何があった……?」
狼は、ヴォルフに担がれて医務室へ運ばれた。後から、事を知って弥生が血相を書いて医務室へ駈け込んできた。
「狼君!?」
医務室のベッドで横たわる狼を、泣きそうな顔で見つめる。
「……」
しかし、意識はない。あんな攻撃を受けたために気を失っている。
「気を失っているだけだ。軽傷とは言い難いが……」
隣でヴォルフがそう俺の様態を説明した。とりあえず、気がつくまでそっとしておくのがいいらしい。
「狼!」太智
「狼君!」清二
「狼さん!」一夏
後からお馴染みの面々も押しかけてきた。また、あとからセシリアと凰も彼の見舞いに訪れた。
「……ったく! どうしてアイツと喧嘩なんかしたんだ?」
太智があきれ顔で二人に聞く。
「だ、だって! アイツ、調子づいて喧嘩打ってきたのよ!?」
「そうですわ! あの人は、私たちの実力を見下したのですわよ!?」
と、セシリアたちは喧嘩になった経緯を話した。もし、彼女たちの言うことが正しければ、発端の原因はラウラにある。
「しかし……ドイツの代表候補生であり、ドイツ軍人ともあろう者がああして他者を見下す人間だったとはな……」
ヴォルフは、同じドイツの戦士としてラウラに心底失望したようだ。
「それよりもヴォルフ! 狼は大丈夫なのか!?」
太智は慌ててヴォルフに尋ねる。
「狼は、それなりの深手を負っているが、命に別条はない。しばらく安静に休ませておけば時期に目を覚ますだろう」
ヴォルフの説明を、出来るだけ冷静に聞いていた太智だが、彼も限界に達しそうだ。
「あの眼帯の銀髪チビ! 舐めた真似しやがって!!」
「そんなに大声出すなよ?」
と、清二が注意するも太智の興奮状態は止まらない。
「狼……」
そんな中で弥生は、ただ彼を必死に見守っていた。
「とりあえず、このままそっとしておこう? 俺たちがここに居ても、狼の回復が早まるわけでもない。皆、また放課後に彼の見舞いにでも寄ればいいさ?」
ヴォルフは、とりあえず解散を言って。周囲は大人しく医務室から出て行くが、弥生だけは一人この場所に残った。
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