第十五話「その憧れは、歪みとなる」前編
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それで、狼さんは君の姉さんと上手くやってんだ?」
「うん! でも、お姉ちゃんって、ああ見えて堅いから蒼真さんはタジタジみたい?」
「でも、すっごい綺麗な人って蒼真さんから聞いたよ? 俺も、一度会ってみたいな〜?」
「じゃあ……夏休み、私の家に遊びに来る?」
「え、えぇ!?」
その一言で、俺は頭の中が真っ白になったが、顔は真っ赤になった。
「お姉ちゃんも、『零の使い手が、どのような強者か一度見てみたいものだ……』って、言っていたから、お姉ちゃん……ああ見えて、剣術とか凄いよ?」
「ええ!? か、敵わないよ〜?」
そのとき、ドタバタと足音が聞こえた。それは、次第に近づいていき、俺たちのいる一組の教室でピタリと止まった。
「あ、狼さん!?」
血相を書いた女子生徒が一組の教室へ飛び込んできた。
「どうしたの?」
慌てる彼女に、弥生が尋ねた。
「転校生のラウラって人が、セシリアさんと凰さんを……!」
「っ!?」
俺は嫌な予感がした。当然弥生も良からぬ展開しか思いつかないらしい。
場所は第三アリーナ。すぐさま俺たちはアリーナへ向かう。
「弥生ちゃん! ちょっと行って来る」
と、俺はは弥生へそう言い残して急ごうとした。
「は、はい……あの、狼君?」
「え?」
しかし、彼女に呼び止められたかのように、ピタリと足が止まった。
「なに?」
「……気を付けてくださいね?」
「あ、うん……」
なんだか、彼女は俺に凄い不安な顔を向けていた。何か嫌なことが起こりそうだといわんばかりに。しかし、急いでいる俺は、そんなことを気に留める暇はなかった。
第三アリーナへ息を切らしながらたどり着いたときには、専用機に乗ったまま地面に倒れるセシリアと凰の姿が見えた。二人とも、かなりのやられ様だった。
「二人とも大丈夫か!?」
俺は慌てて彼女たちの元へ駆け寄る。
「……むぅ? キサマは……」
上空には、ラウラが仁王立ちして俺を宥めていた。
「ラウラ……!!」
俺は、ラウラを睨み付ける。
「どうして二人を傷つけた!?」
そう、上を見上げて問うと、ラウラはニヤけながらこう答えた。
「軽い準備運動をな?」
ラウラはそう鼻で笑った。
「ラウラ! 無関係の人間を傷つけて、何も感じないのか!?」
俺は怒り、彼女に叫んだ。
「フン……くだらん挑発に引っ掛かり、まんまと返り討ちにあった人間など、所詮はこの程度。そんな雑魚に、同情など何も感じん」
「テメェ……」
「一夏が来ればよかったのだが……来たのがお前のような無能者だったとは残念だ」
「な、何だと……!?」
無能という言葉が、俺を刺激させる。それは、俺の過去のコンプレックスからなるものだった。それを彼女が知らないにせよ、俺はつい挑発に乗って零を展開してしまった。
「ほう? そ
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