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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
六 〜邂逅〜
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に、皆が私を見つめる。

「うむ。糧秣の問題だけではない。如何に賊相手とは言え、いつまでも奇策が通じるものではない。やはり、数には数で対抗する必要がある。その点、董卓軍は打って付けだ」
「…………」
「どうだ、皆? 忌憚のない意見を聞かせて欲しい」
「……ご主人様。もし、董卓軍が他の官軍同様、官匪であった場合は、如何なされますか?」
「決まっている。その場で袂を分かつ」
「わかりました。ならば、我らはご主人様に従います」
「よし。決まりだな、明日返事をするとしよう」
「はっ!」



 その夜。
 黄巾党が使っていた天幕を、私達はそのまま用いている。
 その一つを、私一人で占めていた。
 皆と一緒で構わぬのだが、指揮官なのだから、と押し切られてしまった。
 あまり、特権を振りかざすようで好まぬのだがな。

「ご主人様。宜しいでしょうか?」
「愛紗か。入れ」
「はっ、失礼します」
「そう固くなるな。座ってくれ」
「はい」

 素直に、私と向き合って座る愛紗。

「さて、愛紗。私が呼んだ理由は、わかるか?」
「……はい。私の頑ななところ、でしょう」
「自覚はあるようだな」

 愛紗は俯いて、

「私自身、わかってはいるのです。……ですが」
「自分ではどうにもならぬ、か」
「……はい」

 これが、あの関雲長だとは、誰も信じぬのではないか?
 それほど目の前の女子(おなご)は脆く、儚い。

「愛紗。お前の義に厚いところは、確かに美点ではある」
「…………」
「だがな、義に厚いばかりでは、時にそれが命取りになる事もあるのだ」
「どういう事でしょうか?」
「例えばの話だが。……愛紗が敵に敗れ、城を囲まれていたとする。そして、敵からは開城の使者が来たとする。この時、愛紗ならどう答える?」
「決まっておりましょう。武人たるもの、おめおめと敵に降るような真似は出来ません」

 やはり、そう答えるか。

「だろうな。かつての私でも、同じように答えたであろう」
「では、今のご主人様は違うと?」
「まぁ、聞け。開城勧告を突っぱねれば、当然、敵の攻撃は続く。そうなれば、城を枕に討ち死にするか、もしくは血路を開いて脱出するしかない。そうだな?」
「……はい」
「だが、愛紗程の猛将が最後まで抵抗すれば、攻城側の被害も少なくはならぬ。その時、私が攻城側の軍師ならば、こんな策を立てる。城内にそれとなく噂を流し、態と一方に隙を作らせる。そして、血路を開かせる」
「そうなれば、後は突き破るのみ。卑怯な罠など、食い破って見せましょう」
「平時ならば、それで良かろう。だが、その血路を開いた先が、見通しのきかぬ湿原であったら、足止めして捕らえるのは寡兵でも事足りる」
「……ご主人様。それ
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