第一部
第二章 〜幽州戦記〜
六 〜邂逅〜
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
も、ボク達とは事情が違うから仕方ないんだろうけど」
「事情が違う、とは?」
私の問いかけに、賈駆が答えた。
「朱儁軍は、いわば朝廷直属の軍なの。だから、つけられる将も、朝廷の直臣ばかり。当然、血筋や金で成り上がった無能の集まりになるわね」
「せやけど、月んとこはちゃうねん。ウチらは地方の軍閥やから、将も兵も、そういうアホはおらへん。数や装備では見劣りするところもある、けど強さは比較にならんちゅうこっちゃ」
「なるほど」
「如何でしょう? そうすれば、糧秣輸送の件も、解消できると思いますが」
「……気づいておいでだったか」
私の言葉に、董卓はニコリと笑う。
「程遠志軍に目をつけたのは、あなた方ばかりではありません。糧秣に困っているのは、どこも同じですから」
「だから、ボク達もここに目をつけてはいたのよ。もっとも、先を越されちゃったけど」
私達義勇軍には、荷駄隊などという物は存在する訳がない。
活動に糧秣が必要なのは当然だが、それを運搬する手段が、未だに思い浮かばなかったところだ。
「せやけど、戦いはこれで終わりやない。もちろん、ウチかて月の為やったら頑張るけど……。アンタらが来てくれたら百人力や」
「力を合わせて、困っている民の皆さんの為、一日も早く終わらせませんか?」
切々と訴えてくる、董卓の言葉。
そこに、偽りや打算は感じられない。
「返事は、即答をお望みか?」
「いえ。他の方とも相談されてからで構いません。また明日、お越し下さい」
「……承った。では、また明日」
自陣に戻り、主だった者を集めた。
「では、董卓軍に合流するのですか?」
「そうだ。朱儁の時と違い、無用な妬みを買う恐れもあるまい」
私は既に決意を固めていたが、それでも皆に諮る事にした。
全てを、私一人の判断で決めざるを得なかった、新撰組での失敗を繰り返したくなかったのやも知れぬ。
あの頃は、ただ組織を強く、戦うだけの集団にするだけで良かった。
だが、今は近藤さんのような、上に立てる人物はおらぬ。
……伊東や山南さんらが今の私を見たら、さぞ驚かれるであろうな。
「糧秣の件もあるしな。董卓は、そこに気づいていた」
「そうですか……。確かに、自力でこれ全てを運ぶのは不可能です」
「仮に運べたとしても、逆に黄巾党に襲われる恐れもありますしねー」
「報復、という事もあるだろうな。程遠志は黄巾党の中でも名だたる将だった男、主を逆恨みする輩がいたとしても無理はない」
「鈴々は、ちゃんとご飯が食べられればそれでいいのだ!」
「鈴々! お前は、もう少し将としての自覚をだな……。ま、まぁそれはそれとして……ご主人様、既にお心は決まっているのですね?」
愛紗の言葉
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ