第一部
第二章 〜幽州戦記〜
六 〜邂逅〜
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は、完全なる勝利を得る事は叶わなかったでしょう。お礼を申す」
「いえ、それは私の任務ですから。それにしても、あなた方のような方がおられるとは存じませんでした」
そう言って、董卓はジッと私を見据える。
「旗揚げしたばかりですからな。それに、志を同じくする皆の働きがあればこそ、にござる」
「うふふ、それだけですか?」
「ほう。他にもある、と仰せか?」
「はい」
と、董卓はやや俯いて、
「土方さん、と仰いましたね?」
「はっ」
「あなた様ご自身の力もある、そう思いますよ?」
「拙者の?」
「ええ。土方さんは、他の皆さんの働きで、と仰いますけど。集団が強さを発揮するのは、指揮する者の強さでもある、そう思いますよ?」
「なるほど。では、黄巾党はどう思われる?」
「恐らくは、張角を中心とした本体と、一部の将はそうでしょう。ただ、それ以外はただ、数に任せて暴れているだけです」
「しかし、こうして現に官軍は苦戦していますな」
「はい。お恥ずかしい話ですが、今の官軍には、こうした数の暴力ですら、収めるだけの実力がないのです」
「……それをわかっとらん、ボンクラ共ばっかりちゅう事や。賄賂か、血縁なしでは出世も叶わへんぐらいや」
吐き捨てるように、張遼が言う。
「ですから、土方さんの義勇軍は、官軍以上の強さを見せるだけのものがあるのでしょう。それは、土方さんご自身の力でもある、私はそう思います」
「せやなぁ。頭も切れる、度胸もええ。人望があって、おまけに」
と、張遼は私の顔をまじまじと見て、
「ホンマ、ええ男やなぁ、アンタ。そら、女も惚れてまうわ」
「ふむ礼を言うべきか?」
「ええねん。ウチはただ、そう思っただけやねんから。なぁ、月、詠?」
「へ、へぅ……」
「ちょ、ちょっと霞! 何でボク達に振るのよ?」
董卓と賈駆、顔が真っ赤だな。
「むう。主はまた、罪作りな事を」
「お兄さんは、天然の女たらしですからねー」
「……二人とも控えよ。今は、そのような話をしているのではない」
小声で、二人に注意しておく。
「そ、それより月。言う事があるんでしょ?」
「う、うん。……あの、土方さん。一つ、提案があるんですけど」
「承りましょう」
「はい、コホン」
董卓は咳払いをしてから、
「皆さん、私達と一緒に戦っていただけないでしょうか?」
「同行せよ、と?」
「はい。皆さんの目的は、黄巾党討伐なのでしょう? それならば、兵は多い方がいい筈です」
「なるほど。ですが、宜しいのですか? 我々は雑軍、貴殿のような官軍とは違います」
「朱儁将軍との事は、私も聞き及んでいます。あの方も、ご自身は優れたお方なのですが……」
「取り巻きが悪すぎるわね。もっと
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ