01.岸田の元に来たのは
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ったであります。このあきつ丸、任務達成だけでなく、比叡殿に助けていただいた恩も返せるであります」
その直後あきつ丸さんの身体が、あの日の比叡姉ちゃんのように輝き始めた。それを見て岸田は『ひえっ?!』という悲鳴を上げ、腰を抜かしている。岸田、その悲鳴を姉ちゃん以外が使うことは許さん。
「こ、これは……」
「お二人とも、このあきつ丸の手を握って欲しいのであります」
輝くあきつ丸さんが、僕と岸田に手を伸ばしてきた。僕はあきつ丸さんの左手を取り、岸田の手を強引に取って、同じくあきつ丸さんの右手に触れさせた。
その途端、僕と岸田の身体も同じく光り輝き始めた。痛みや違和感はないが、自身の身体が発光し、身体からたくさんの光の粒がたちこめる体験なんてしたことなくて、少し狼狽えてしまう。
「大丈夫であります。このまま手を取っていていただければ、向こうに行けるのであります」
「そ、そうなんですか? つーかこんなタイミングよく……」
「それは向こうに到着してからお話するであります」
岸田を見ると、岸田はさっきと同じく、白目を剥いて泡を吐いている。スベスベマンジュウガニの再来だ。
「身体が……身体が光って……うひゃひゃ……」
「岸田しっかりしろよ! 仮にも叢雲たんチュッチュ提督の分身なんだろ?」
「……ハッ! そういえば!!」
光り輝くスベスベマンジュウガニが、思い出したように口から泡を吐きながらあきつ丸さんに詰め寄った。
「向こうに行くということは!! 叢雲たんに会えるのか?! 待ってくれているのかッ?!!」
いよいよの段階にきて、やっと正気を取り戻したかと思えば、聞くことはそれなのかこのスベスベマンジュウガニは……
「あ……あの……」
「どうした?! 叢雲たんは待ってくれているのか?! 待ってくれているのだな?!!」
「そ、それがー……叢雲殿は敵母港空襲作戦に出て、しばらくは帰ってこないのであります……」
「そ……そう言えば今日の昼過ぎに遠征任務に出したんだった……ボーキないから……む゛ら゛ぐもぉぉおおおおお?!!」
その瞬間、僕達の姿は消え、向こうの世界に渡った。こっちの世界で最後に聞いた声は、いまいち人間に進化しきれないスベスベマンジュウガニの慟哭だった。
姉ちゃん、待ってて。今行くから。
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