01.岸田の元に来たのは
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岸田の家に向かった。
岸田の家の前に到着した僕は、インターホンを鳴らす。『はーい』といってドアを開けてくれたのは岸田のお母さん。岸田の家は、父親が単身赴任で滅多に家には帰ってこられず、実質、岸田家は岸田と岸田のお母さんの二人暮らしだ。その岸田のお母さんを適当にいなし、僕は岸田の家に上がらせてもらった。
こちらから聞かずとも岸田のお母さんが教えてくれたのだが、やはり今、岸田は来客中らしい。それも、服は全身黒ずくめで、おしろいを塗ってるんじゃないかと思うほどに顔が白い、若い女性なんだとか。なんだその個性的な風貌の女性は……
岸田の部屋の前まで来る。あの日……比叡姉ちゃんと共にレ級に立ち向かった日以来の緊張が僕の手を襲い、緊張で手が震えてドアノブをうまく握ることが出来ない。理由は分からない。得体のしれない女性という存在を恐怖に感じているのか……はたまた他に何か要因があるのか……なんとか力を込めてドアノブを回し、意を決した僕は勢い良くドアを開いた。
「岸田! 無事か?!」
「あおういうえあういうえあぁぁあああシュウ!!」
よかった。岸田は白目を向き、口から泡を出して死亡寸前のスベスベマンジュウガニみたいな顔をしていたが、意味不明ながらも僕の姿に反応したあたり、少なくともひどい目にあってはないらしい。
「よかったぁあ……無事だったか……」
「橋立シュウ殿……で、ありますか?」
電話口で何回か聞こえた声に話しかけられた。声のした方を振り向くと、そこには確かに、岸田のお母さんが説明した通りの、人身黒ずくめの服に身を包み、肌が雪のように白い、一人の女性が座っていた。彼女は僕にペコリと頭を下げ、こう言った。
「突然申し訳ございませぬ。あなたが、橋立シュウ殿でありますか?」
僕はこの女性と会ったことはない。会ったことはないのだが、どこかで見た覚えがある。
「そうです。あなたは?」
「失礼。自分、“叢雲たんチュッチュ鎮守府”所属、特殊船丙型、あきつ丸であります」
そう言いながら、彼女……あきつ丸さんは立ち上がり、敬礼をしながら僕をまっすぐに見つめた。そうだ思い出した。比叡姉ちゃんのことを調べた時、この人のことを見た覚えがある。
「……ん? その妙ちくりんな鎮守府名は……てことは比叡姉ちゃんの……?」
「はい。橋立殿のことは、比叡殿から常々聞いておりました」
あきつ丸さんのこの発言を聞き、僕はあの日々のことを思い出し、胸がキュッと締め付けられたのを感じた。それにしても、もう二度と体験することはないだろうと思っていた、ゲームの中の人との会合をまた果たすだなんて……しかも相手は比叡姉ちゃんと同僚っぽいし。
「比叡姉ちゃんと同僚なんですか?」
「ハッ。そうであります。橋立殿のお話
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