01.岸田の元に来たのは
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わり辺りが暗くなってきた頃、僕は秦野を家に送り届けた。
『キャラメルもいいですけど、甘酒もいいものですね。今日好きになりました』
別れ際にそういい、上機嫌で自分の家に入っていった秦野。秦野との付き合いも結構長いけど、別れた後少しスキップを踏むように上機嫌で家に入っていった彼女は見たことがない。うん。まぁゴキゲンなのはいいことだし、人生を楽しむ上で、好物が増えるのはいいことだ。
しばらく歩いていると、僕のスマホに着信が入った。えらくタイミングよく電話がかかってくるなぁと思いながら、僕はポケットからスマホを取り出し着信の相手を見る。画面には『岸田』という文字と、岸田のブサイクな写真が表示されていた。
「う……」
反射的に変な声が出てしまうのは勘弁してくれ岸田。嫌いではないんだ。嫌いではないんだけど、どうも岸田という存在を確認してしまう度、脊髄反射で変な声が出てしまうんだ。僕は手袋を外すと、寒さに震える手でスマホを操作し、岸田からの着信に出た。
「ぅぅおおお岸田ー。どうかしたかー?……」
『うああああうあうあうあううううああああうううあうあうあ』
スマホの向こう側から聞こえてきたのは、呪詛の言葉としか思えないような、岸田のうめき声というか叫びというか妙な声だった。ついに岸田はおかしくなってしまったのか……
「岸田?」
『うああああああああああシュウよ……あいいいあああいあいあいいいあああ』
ダメだ。まったく話にならん。
「どうしたの? なんかあったの?」
一応そう岸田に問いかけるが、相変わらず岸田はうめき声しか発してこない。しかしうめき声を注意深く聞いていると、ときどき若い女の人の声が岸田の声に混じって聞こえているような? ついに岸田に彼女が出来たのか?
「岸田? 女の人の声が聞こえるけど、誰か来てるの?」
『そ、そうなんだけどあいあいいいいああああああ』
うーん……確かに岸田はキモヲタだけど、根は悪いやつじゃないし、実はイケメンなところがあって、決して会話不可能なほど知能に欠陥があったわけではないはずなんだけど……それよりも気になるのが、岸田の背後から聞こえる女の人の声だ。
――岸田殿、橋立殿がお電話の相手でありますか?
なんかこんな感じのことを言っていた気がするんだけど……僕の名前が出ている? 相手は僕を知っている?
「岸田? そこに誰かいるんだな?」
『お、おう。いああああううええうい』
「そいつは僕のことも知ってるんだな?」
『いあああうううおおおえええいいあうあうううう』
ダメだ……岸田の返事の意味がまったく分からない……埒が明かないので、僕は岸田の部屋に行き、真相を確かめることにした。岸田に電話を切らないように伝え、僕は走って
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