四話:救われる者、救われぬ者
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たして、人の幸せを摘むことだけを行ってきた自分が幸せを教えることができるのか。
自分を幸せにすることを許せない男が誰かを幸せにできるのか。
悩むことは全て自身の力の無さ故のものだった。
「……分かった。努力しよう」
たっぷりと悩んだ末に下した決断は要求をのむことだった。
自信など欠片もなかった。だが、それでも。
誰かを少しでも救えるという誘惑の前では関係がなかった。
己の欲望を満たすために契約を結んだ。
「なら、契約は成立だな。そうと決まれば早く済ませてくれ。騎士達がもうすぐ来る」
「分かった。……始めよう」
「なんでや…今まで悲しい思いしてきたんや。救われなおかしいやろ!」
「主はやて、私の心と体は既に救われています」
夜天の書の消滅の儀式。その最中に現れたはやてにあやす様に話しかけるリインフォース。
だが、一日の内に何人もの家族を失いかけたはやては決して認めない。
「嫌や……おとんの次にリインフォースも消えるなんて嫌や!」
「主はやて……これはお別れではありません。いつか必ず、また会えます。切嗣とも、私とも」
「リインフォース…?」
慰めにしてはやけに確信の籠った言葉に涙の溜まった目を上げるはやて。
リインフォースはその視線に微笑みを返すだけで答えを教えることはない。
そのまま魔法陣の中心に移動していく。
「お別れの時間です」
最後の最後にこの美しい世界を。愛おしい主を、騎士達を。
そして、小さな勇者達をその目に焼き付けて彼女は目を瞑り、雪に当たるように顔を上げる。
彼女は祝福の風となりこの世界を旅する、果てのない旅に出る。
「あぁ……本当に贅沢な生涯でした。主はやて、守護騎士達、小さな勇者達……ありがとう」
なんと贅沢な生涯だろうかと彼女は満足げな表情を浮かべる。
主の危険を払い、主の身を守るのが魔導の器たる自身の命題。
その命題を果たし、主にその終わりを惜しまれる。魔導の器として最高の終わり方。
そして、後に託した己の意思が人間としての幸せを得られる。
デバイスとして、人間として、両方の幸せを得られる者など自分ぐらいなものだろう。
これを贅沢と言わずに何を贅沢というのだろうか。何よりも―――
「そして―――また、会いましょう」
―――再びはやて達と巡り合うことができるのだから。
自分の生涯は最高のものだったと胸を張って言える。
最後にそう思い、彼女はしばしの旅路に出た。
「リインフォース……」
白銀の粒となり、空へと昇り、天から主はやてに贈り物を届ける。
はやての手の平に降り注ぎし物はリインフォースの魔導の欠片。
新たな魔導の導き手を生み出す
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