脱出-エスケープ-
[12/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
困る、そしてあの巨人には借りがあるからな」
「え?」
借り、と聞いてキョトンとするマチルダ。一方でグルもその反応を意外に思った。
「聞いてないのか?正体が何であれ、わしらは以前、王党派が壊滅した際、あの巨人に助けられたのじゃぞ」
ガル船長たちは、以前ワルドの裏切りが発端となって起きた、あのときの事件でベロクロンに襲われたところをネクサスがけつけて切れたことに恩義を覚えていたのだ。
そういえば、シュウの奴、テファに正体がばれる以前まで、やたら姿を消すことが多かった。おそらくあちこちで怪獣と戦っていたことが容易く読み取れたのだが、まさかこんな連中までも救っていたとは。
「だが嬢ちゃん、助けることは今のわしらにはできねぇ。まだ我々はようやく再結集といえるだけの形となったばかりだ。グレンがいたなら話は別だったろうけどな」
「そ、そんな…!」
助けたくても、助けられない。告げられた言葉は子供たちには残酷なものに聞こえた。もっとも、メフィストクラスの強敵となると、用心棒でもあったグレンファイヤーのいない炎の空賊たちが束になったところで勝ち目はない。無駄な犠牲を生んでしまうだけだ。
「今のわしらにできることは、嬢ちゃんたちを地上に送ってやることくらいだ。悪いが、それで勘弁してくれ」
「で、でも!」
何とか助けてもらえないだろうかと再度懇願しようとしたエマだが、マチルダが彼女に向けて口を挟んだ。
「…エマ、そこまでだ。あたしたちは元々アルビオンから脱出するために、こいつらの船を拝借しようとしてたんだ。そいつらがあたしたちを、自分から地上に送ってやるなんて言ってるんだ。それだけでも儲けもんなんだよ」
「………」
エマは納得しきれない様子で押し黙った。
「あのバカのことだ。最初からこうなることは覚悟していたはずだよ。…後で説教してやるけどね」
続けてそう告げた時のマチルダの顔は、苦虫をかみつぶしたようなものだった。確かにあいつの都合や意志を考えて、あまりウルトラマンのことに関することや、彼の戦いには口を挟まないようにした。でも、それが災いした。テファが傷ついてしまい、この事態を防げなかった自分が情けない。
「…ごめんな、エマ」
そっと、エマを優しく抱き寄せるのが今の自分にできる精一杯だった。
「船長!船の出航準備が整いました!」
すると、突然船の内部に続く入口から、炎の空賊団のクルーと思われる男が飛び出し、ガルたちに出向の準備がすでに整っていたことを伝えた。
「な!?いつの間に…!?」
自分たちが気づかない間に、船の主導権をとっくに自分たちのもとに戻していたことに、さすがのマチルダも驚愕した。
「ふ、わしらは空賊で、元箱の船の持ち主だったのだぞ?」
どうやら、マチルダたちと話している間に、抜かりなく出向に必要な準備段階を済ませてい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ