脱出-エスケープ-
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「なんでお前が、ここに…」
ここにいるわけがない。異世界であるこの場にいるはずが、それもこうして目の前にいるはずがない。なのに、なぜ今…自分の目の前に彼女がここにいるんだ?
まさかと思い、シュウはパルスブレイガーを起動する。だがビースト振動波を付近から感知できない。
すると、少女の幻影がシュウの前に一歩踏み出してきた。静かな佇まいを保つように、茶色の髪を夜風に靡かせながら、さっきまでシュウとの間に開ききっていた距離をなくし、彼のすぐ目の前にたった。
そして、彼にそっと優しく触れようとした。そのとき、シュウは警戒心をむき出しにし、彼女に向けてブラストショットの銃口を向けた。
「違う…お前は…お前は愛梨じゃない…!」
「………」
あいつが、こんなところにいるはずがない!今、俺の前に立っているこいつは、ビーストが狡猾にも作り出した偽物に違いない。
目の前の、偽りとしか思えない存在に向けて引導を渡そうと引き金を引こうとしたときだった。
「シュウ、待って!」
そこへさらに現れたのは、アスカやマチルダとは別にシュウを追っていたテファだった。まさか、シュウが人に銃を向けているなんて信じがたい光景を目にして、慌てずにいられなかった。
しかし、シュウの銃を握る手は酷く震えていた。
こいつは幻影でしかない。撃たなければならない。
だけど…
相反する思いが交錯する。
敵を倒すことに、戦うことに躊躇いを見せなかったシュウが、迷いを見せていた。
「愛梨…俺は…俺は……」
自分の痛みだらけの過去の象徴である少女の姿を、憎悪とも悲しみとも取れる、複雑な表情で睨み付けた。
「アイリ…?」
テファはその名前を聞いて、シュウと相対している少女を見る。もしやこの少女は、彼の知り合いなのか?
けど、自分と知り合って何ヶ月か経過した今、シュウにこんな知り合いがいるというのか?テファはふと、それを疑問として心に抱いた。
ほとんど外の景色を見ないで育ってきたテファにも、あの少女の服装がなじみ深いものではないものであることを感じ取った。
なんとなくだが、シュウの昔の知り合いたちが写されていた写真に写っていた彼の友人たちのものと似ている気がする。
もしかしてと思い、テファは尋ねた。
「あの女の子は誰…?シュウの、知り合い…?」
「……」
銃を少女に向けたまま、シュウは肯定も否定はしなかった。だが、彼の表情にわずかな変化があったことに気付いたテファはすぐにわかった。
この女の子は、シュウの知っている人なのだ。
「シュウ、銃を下して!どうして銃を向けているの!?その人が知っている人なら、そんなことをしたら…」
「こいつは…愛梨はとっくの昔に死んだ!」
「え…!?」
死んだ、だって?テファは耳を疑った。言葉通
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