優艶なる王達の茶会にて
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陽だまりの下、穏やかな午後はお茶とお菓子を添えて優雅に贅沢に。
数多の知識の数々を参考に作られた茶器は二つの螺旋を揺らす覇王のお気に入り。
カチャリ……慎ましやかに鳴った音が、彼女の上品さを際立てる要因の一つに相成って、完成された所作を見れば、それがこの特殊な茶器での作法なのだろうと見たモノは判断してしまう。
「……“紅茶”、とあいつは言ってたかしら?」
「はい。異国の茶葉を取り寄せるのには苦労しました。普通のお茶とは淹れ方も異なりますが、どうにか人に出せるカタチになったかと」
「ふふ、苦労を掛けるわね、店長」
「いえいえ、未だ知らぬ味を求めるのは料理人の本懐。どうぞ、気兼ねなくお茶請けと一緒に召し上がってください。紅茶に合いそうなモノを作って来ましたので」
店長の笑みは幸せに溢れていた。
こうして味の分かる人を相手に料理を振る舞う時間は、彼の欲求をこの上なく満たす。
ちら、と彼は目を他に向けた。華琳の前に座る豪著な金髪を巻いた一人は、僅かに顔を強張らせて恐る恐る茶器に手を伸ばした。
心を決めた彼女――麗羽が、華琳に倣って静かに、優雅に紅茶を口に運んだ。
さすがというべきか、彼女の動きは見る者を魅了する程に礼儀正しく、やはり三公を輩出しただけはあるとその所作を見て華琳も内心だけで褒める。
一口。唇を濡らす程度に留めた。しかしそれだけで、高級品を堪能しつくしたと言っても過言ではない元袁家の当主は、ほう……と感嘆の吐息を吐き出して僅かに呆ける。
ハッと気づいた頃に華琳からいじわる気な視線を向けられて、気恥ずかしさから麗羽は少し耳を赤らめた。
「……上品なお味ですわね」
「気に入って頂けましたか?」
「ええ、とても」
「それは重畳。覇王様と袁麗羽様のお墨付きとあれば作り手冥利に尽きます」
すっと手を追って一礼をする店長は、褒められたことが嬉しいと子供のような笑顔を見せた。
「店長、お菓子の説明を」
「承知しました。では右から……“らすく”、“すこぉん”、“しふぉんけぇき”となっております。甘さを控えめにすることで紅茶をより楽しめるように作らせて頂きました」
「ふむ……」
見た事のないお菓子の数々。やはり未知のモノを見ると胸がときめく。
興味深く眺めていた華琳は、幾分でやっと手に取り……
「では、頂きましょう」
軽くラスクを齧ってまた紅茶を一口飲んだ。
控えめで上品なその味に、華琳も麗羽もほうと甘い吐息を吐き出す。
「さすがね。紅茶との相性を考えた抜群の味付け、食感も焼き加減も申し分ないし、このお菓子なら宮廷で振る舞ってもいいくらいよ」
「ええ、ええ……なんと言ったらよいのでしょう。これほど優雅なお茶の時間というのは経験したことがあり
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