暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
25話 赤く巨大な魔物
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 俺とヒヨリが加わってフルメンバーとなり、加えてテイムモンスターという特別枠に収まったティルネルを擁する前代未聞の七人PTは、湿潤な苔に覆われた地面に足跡を刻みながら森を奥へと進む。森の中において広範囲かつ極めて精密な索敵を可能とするティルネルの専用スキル――――彼女曰く、正確には《森精の囁》というまじないらしい――――を中心に、プレイヤー陣は残されているであろうマーキングを人海戦術で探り回る格好だ。
 探索効率という面では、破格の性能であるティルネルが居てくれるからこそ発見はまさに時間の問題と思われたが、肝心なヌシ熊が索敵に掛からず、加えてマーキングさえも発見できない状況が続いている。メインメニューを確認すると、現在時刻は午後二時二十分。当初設定した探索打ち切りのタイムリミットまで残り四十分というところまで差し迫る。


「あーもう! 全ッ然見つからない! つまんなーい!!」
「うっせぇ。騒ぐ暇あったら探せ」


 ただただ気を見上げるという単調な行動と、一向に結果に結びつかない現状に業を煮やしたレイの怒号を、リゼルが軽く一蹴する。この遣り取りは既に七回を超えているのだが、誰も気にしなくなってしまっている。木の幹の高い所にマーキングが刻まれるのだが、これまで見てきたそのどれもが綺麗な樹皮を纏っている。まさか、低い所に刻まれているなどという話はないだろうかと疑心暗鬼に駆られて足元を見下ろしてしまうが、当然、力強く張られた根くらいしか見られない。あとは苔に紛れて青々としたシダや草が風に揺れ、幹の下部には手のひらに収まるくらいの赤い毛束が引っかかっているだけ。


「………赤い、毛?」


 ふと思い立ち、赤い毛を摘まんでみる。俺の知る限り、この森で見たモンスターのものとは異なる色合いの毛だ。ヌシ熊は灰色の毛並であったから、これは恐らく別の魔物のものだと思われる。一先ず指先でタップしてみると、アイテムとしての名前と説明がウインドウに示された。
 《焔獣の毛》と銘打たれた毛束は、テキストによると簡単に風に吹かれてしまうほど軽いとされている。試しに地面に置いてみたところ、そよ風程度の風量で跡形もなく吹き飛ばされてしまった。驚くほどの軽さだが、この場合は耐久力の乏しさと受け取るべきだろう。見たところ、生成されてからすぐに拾わないと消失してしまう、ある意味でレアアイテムのようだ。
 しかし、問題はこの毛束が如何にして生成されたかという点であろう。考え得るのは、そう時間の経たない間にこの毛の持ち主が付近を通りかかったということか。


「燐ちゃん、引っ掻き傷あったよー!」
「え、ヒヨリちゃんホント!? ………って、こっちにもあるわね………」
「ボクのところにもあったけど?」


 ヒヨリ、クーネ、レイ。遅れてリゼルとニオから
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ