第3章 黄昏のノクターン 2022/12
25話 赤く巨大な魔物
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にも迫らんとするニオの姿があった。
金属鎧に身を包んだ少女は左手の片手鎚を袈裟に振って地面に投げ捨て、右手のタワーシールドを脇に引き絞る。さながら正拳を見舞うが如く………なぜ武器を捨てたのだろうか?
「ニオ、いっけーーー!」
「ぶちかましたれー!」
「ニオ、がんばー!」
湧きあがるニオへの声援。俺を含めたヒヨリとティルネルは完全に蚊帳の外だ。
弱点であった鼻へのダメージと、体重を支える二足のうち一方に受けた傷からヨロヨロと二足のままふらつくレクステリウム、その左足へ掛かる重量が最大に達する瞬間を見計らっていたかのように、ニオは突如として動き出す。
「うおおおおおおおおおおッ!!」
怯え症とばかり思っていたニオの声とは思えないような裂帛の気合、そして放たれる《盾の一撃》。
ニオの身長に届かんとするほどの金属の塊は鈍い灰色のような色彩のライトエフェクトを帯びて、山のような巨体を唯一支える左足の踵を捉える。小さな身体からは想像もつかないようなSTR値によって繰り出された暴力は凄まじい衝撃音を轟かせながらも、あたかも大木を根元から吹き飛ばしたかのように呆気なく振り抜かれる。
追って大地を伝播する衝撃は、背中から地面に降ったレクステリウムの質量だ。落下時のエネルギーのベクトルが十二メートル程もある巨体を貫いて地面に突き刺さり、驚きに目を見開くレクステリウムは何が起こったのか分からないといった風情でありながらも、反動によって肺の中の空気を声にならない悲鳴を伴って吐き出す。
何が起こったのか、端的に整理すればこういうことだろうか。
――――ニオがレクステリウムの踵を盾の正拳突きでぶん殴り、その勢いで足を払い、転倒させてしまった………
盾で殴るモーションのソードスキルはMODで使用可能になると聞いたことがあるが、この威力は一体どういうことなのだろうか。到底信じられないような現象が起こっているが、当人であるニオはこちらの困惑を意に介さず、高らかに叫ぶ。
「今です! 全員で殴っちゃってください!」
言うが早いか、ニオの叫びを待たずに進撃を開始したクーネ達に倣って、俺達もレクステリウムに追撃を仕掛ける。その間も脳裏に刻まれた先の一撃の光景は鳴りを潜めることはなかったが、一つの確かな感想を以て帰結させることとした。
ニオさんマジカッケー!
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