第3章 黄昏のノクターン 2022/12
25話 赤く巨大な魔物
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せればスタンを取れるはずだ!」
PTメンバーに向けて叫び、全員がレクステリウムとの間に大木を挟むような位置関係に陣取る。これで突進については対処が可能だと思いたい。しかし、相手は突進の予備動作どころか大きく口腔を開く。その行動に首を傾げる一同とは裏腹に、喉の奥でちらつく火の粉の煌きを見付けることが出来たことは幸いであった。とはいえ、遅過ぎるという思いもあったが。しかしそれによって、ノーマークであったが故に記憶の奥底に沈みかけていた情報が急浮上する。
火炎ブレス。これより上の層で見られたモンスター限定の攻撃用スキルであったそれは、雷のような直線的な攻撃範囲ではなく、より流体的に遮蔽物の裏側まで回り込む特性が備わっている。突進のみを警戒して大木を挟んで立ち回ろうという方針は聊か不十分であったという事か。しかし、壁のように長い遮蔽物の無い森では火炎ブレスの猛威は抗い難いものだ。ブレス特有の長射程に加え、遮蔽物の裏にまで攻撃が届くともなれば、逃げ場など求めようもない。
しかし、現状では思いつく回避手段もなく、その危険を周囲に叫んで伝えるくらいしかできない。せめてリスクを分散させる程度しか出来ないが………
「火炎ブレス来るぞ! 全員、熊の左右に退避しろ!」
言われるがままに、しかし迅速にPTが左右に分裂する。見事にクーネ達と別れ、ヒヨリとティルネルが後を付いて来るかたちになる。再びレクステリウムを確認すると双眸は確実に俺達を捉え、先程より明らかに輝きを増した口腔を見せつけてくる。見たところ、もうブレスの発射に猶予はないだろう。全滅を先延ばしにする意味合いでPTを分断したのは良いが、このままではダメージをもらうまで時間の問題か。
「燐ちゃん! こっち!」
しかし、突如として飛び掛かったヒヨリに捕縛され、そのまま吹き飛んだ俺達は次の瞬間に水面を割って水の中へと滑り込んでいた。ヒヨリが飛び込んだのは、この森に多数存在する湧き水の泉。狭くも深い水たまりを回避手段として利用するヒヨリの閃きには舌を巻かされるが、いい加減頭を抱き寄せるのだけはやめてほしい。このまま《首絞め判定》まで有効になってしまおうものなら、水から上がる頃には虫の息になっていること請け合いだが、当然、解放してくれる素振りは一向に見られない。
遅れてティルネルが入水し、水面が煌々と輝く。およそ五秒もの間、ヒヨリにしがみつかれるかたちでブレスを逃れた俺達は熱湯と化した泉から脱出する。システムに首絞めと見做されなかったおかげで損傷は軽微だ。そして幸いなことに、火炎ブレスによるダメージは完全に防げている。今後、これを活用しない手はないだろう。レクステリウムは冷却に時間を要するのか、ゴフゴフと鼻を鳴らしながら動こうとしない。そして、PT全員もまた硬直
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