第3章 黄昏のノクターン 2022/12
25話 赤く巨大な魔物
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も同様の報告が届く。突如として発見の声が相次ぎ、ヌシ熊捜索は驚異的な速度で決着を見たと言っても過言ではないだろう。しかし、ヒヨリ達の発見したマーキングを確認したところ、俺の想定していた敵の姿に陰りが生じた。
「………高い」
「ふぇ?」
誰にともなく、自問自答の為に零れた呟きにヒヨリは律儀に反応した。
マーキングの位置が高すぎるのだ。ベータテストの頃に撤退戦を演じたヌシ熊、《Magnatherium》はその全長は精々八メートル程度の熊であった。しかし、これらマーキングの刻まれている位置は地表から十メートルを超えるであろう位置にあって、しかも傷は幹を深々と抉り、破壊力をまざまざと見せつけている。
「俺の知っているヌシ熊は、とてもあんなところに爪を立てられるような大きさじゃなかった。どう見積もっても別物だ」
「………え、それって………」
「皆さん、こちらに巨大な魔物が来ます! 戦闘の準備を急いでください!!」
ヒヨリの思考の完結を待たず、ティルネルが声を張り上げる。
即座にクーネ達が動く。盾を構えるニオを最前列に片手剣のクーネと長物使いのレイが左右に並び、短剣を構えたリゼルはその後ろにつく。ニオが攻撃を受け止めて、クーネとリゼルがダメージディーラーを受け持ち、レイは状態異常要員だろうか。役割の受け持ちは隙がないように見受けられる。
俺達はいつも通り、前線で俺が攪乱して隙を作り出し、ヒヨリはクリティカルを交えた高威力のソードスキルを叩き込んでの一撃離脱、新たに加わったティルネルは弓による援護射撃を担当。スキルも特殊な効果なものが少ないSAOにおいては、こうした単純な配置や役割しか組めないが、やれるだけのことをやるしかない。
間もなく、それ自体が質量を伴っているかのような、規則的な地響きを伴った足音は次第に大きくなる。岩が擦り合うような唸り声や枝の折れる音が近づき、ついにその姿が明らかになる。
草葉の緑や木肌色という森の色彩を一切無視したような、炎の如く赤い体毛に覆われた巨体は予想した通りにヌシ熊よりも一回り大きく、幹を容易く抉る四肢の逞しさは圧巻の一言。額から生える角や爪はそれだけでも武器に転用できそうな鋭さを備えていることが見て取れる。そもそも《Rextherium》という名前である時点で目的の魔物ではないのだが、熊は熊。誰も退こうとしないあたりから察するに、これで妥協するつもりなのだろう。
………ただ、正しい意味で妥協になればいいのだが。
「燐ちゃん、私の知ってる熊さんと全然違うよ………?」
「コイツ、俺の知ってるヌシ熊でもないぞ」
「呑気に話してる場合じゃないでしょ!?」
「幹の太い木の裏に隠れろ! 突進を誘発させて自爆さ
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