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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 4
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う? お前も……私も、自分がしっかりしなきゃ話にならない。その為に必要な休憩ってヤツだ。無理矢理私に付き合うか、少し休んで自分を立て直すか。お前が、今。決めろ。」
 私の腕は短くて、隣に居る誰かの体も抱え切れない。伸ばしても何も掴めない。
 けど、このまま見逃して見過ごして諦めるのも嫌なんだ。
 だから、届かなくても伸ばし続ける。
 届くまで諦めたりしないって、私はそう決めた。
 なら、お前は?
 お前はこれから、どうしたい?

 (……ありがとう、ロザリア)
 長い長い沈黙の後。俯いてたアリアがゆっくり顔を上げて、弱々しく微笑んだ。
 夜の獣道を歩いて歩いて、漸く小さな灯りを見付け……安心感と喜びと極度の疲労が一度に放出されたみたいな、情けない顔だ。
 (ほんの少し……クロスツェルが倒れる前までには起きるわ。それまでの全部を、貴女に押し付けても良い?)
 「寝たきゃ寝ろっつったのは私だ。この場合は押し付けとは言わん。が、感謝は忘れないように」
 (ふふ……ええ。忘れたら凄まじい勢いで怒鳴られてしまいそうだもの。目を覚ましたら、またお礼を言うわ。……少しの間、お願いします)
 自分に頭を下げられるのも奇妙な感じ。
 まぁ……出来が悪い姉とでも思えば、違和感ばかりでもなくなる、か。
 「任せとけ。お休み、アリア」
 (お休みなさい、ロザリア)
 アリアが目蓋を伏せて直ぐ、気配がぷつんと途切れた。意識の空間を閉ざしたから、私でも簡単には起こせないだろう。
 今の内に爆睡してりゃ良いさ。起きれば今度こそ自分が仕出かした事と真っ向対峙しなきゃいけない。
 コイツが本当に苦しむのは多分、その先だ。
 「さて、と」
 右手で頭をがしがしと掻き、どんだけ熱中すれば此処まで毟れるんだ? と、感心するほど濫立してる草塚の森を見上げた。
 「この辺でいいか」
 手近にある塚を一つ適当に選んで「おりゃーッ!」と蹴り飛ばす。
 千切れた葉っぱが風にぶわっと散り、土に触れた端から元通りの生きた姿を取り戻していく。
 厳密に言うと、これはよく出来た作り物で、生物じゃないんだけどね。
 他の塚も次々と勝手に倒れ、草原は見事復活を遂げた。
 「……存在する何もかもをこんな風に簡単に直せるなら、誰も苦しまないんだろうな」
 現実は何も直せない。
 壊れたら、失ったら、消えたら。
 二度と元には戻せない。
 だからこそ失くせば悲しいし、一つ一つを大切に守りたいと思うんだ。
 私も……
 「……って、いかん。クロスツェルを置き去りにしたままだった。そろそろ拾ってやらないと」
 幼女達も離れてるだろうし、今一人ぼっちだよな。
 寂しさにいじけてたりしないか? なんて冗談を考えつつ遠見して……
 「ッ!?」
 見えた光景に、
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