瑠璃色の死神ー後編
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「もうわけわからないな」
俺はチラリとラピスの顔を覗いてみた。俺の視線に彼女は何事かと首を傾げる。流石に今の声はラピスの耳にも届いていたはずだ。それでも特に気に止める様子も無いということは敏感になっているのは俺だけで本人にとっては大したことでは無いのだろうか。
いや、最早死神と呼ばれる事に馴れてしまっているのかもしれない。「呼ばれ馴れているから気にする程の事でもない」というのは悲しい事だ。何よりも似たような事が自分にも覚えがある。だから「ラピスの気持ちが分かる」だなんておごるつもりは無いが、どうにかしてあげたいなんて勝手な事を思ってしまうのだ。
そんな事を考えているとふと自分の過去を思い出す。
「お前に生きている価値など無い!お前は俺の道具に過ぎねぇんなからな」
頭の中に思っていた、かつて誰かに言われた言葉をに口に出してしまった。
「ファル?」
不思議そうに俺を見詰めるラピスを見て我に返る。俺は直ぐ様手を横に振り、否定してから謝った。
「す、すまん。これはお前に言った訳じゃなくでだな」
「分かってるよ。ファルはそんな事言うような人じゃないもんね」
そう言って微笑む彼女を見てほっと胸を撫で下ろした。それと同時に自分を見透かされているようで恥ずかしくもある。そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ラピスは穏やかな顔で俺の目を見据えた。
「何かあったの?」
「あぁ……それよりも飯だろ飯」
俺は誤魔化す様に話題を逸らす。だがこんなバレバレのやり方では誰が見ても逃げたいことなど一目瞭然だろう。ラピスはそんな俺を素直に見逃してはくれなかった。
「別に誤魔化す様な事でも無いでしょ」
「まぁそうなんだけどな……」
俺は観念して俯くと自分でも驚くほど小さな声で続けた。
「今はまだ話せないかな。すまん」
「そっか。ならしょうがないね」
ラピスはそう言って黙り混んだ。俯いている俺には彼女の表情は伺い知れない。
互いにしばらく無言でいると不意にラピスが口を開いた。
「今日の晩御飯家で食べる?」
「は?」
何か聞き間違いをしたような気がしたので俯いていた顔を上げ聞き返した。
俺の反応を聞いたラピスは呆れたような顔を見せる。
「だからぁ。私の家で晩御飯をご馳走しようって言ってるの」
「な、何でまた」
どうやら聞き間違いでは無かったみたいなのでその結論に行き着いた理由を尋ねてみる。するとラピスは一瞬空を見上げるとすぐに俺に向き直った。
「今日色々連れ回しちゃったじゃん」
そう言って苦笑いを浮かべるラピスの続く言葉を俺は黙って待っていた。
「それでそのお詫びって事でどうかな?」
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