第九十三話
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の杖。
「よっし、行くわよ!」
リズの号令の下、身を守る手段を持たないエメリを全員でカバーするようにしながら、ダンジョンと化している洞穴に入っていく。洞穴の中はイメージと違い大して暗くはなく、どこからか日光が入り込んでいるようだ。
「ちょいちょいちょい、っと。一応灯りね」
「あー……そういやスプリガンってそんな種族だったわね、そういや」
先頭に立ったノリが慣れた手つきで灯りを点す魔法を使っているのを見て、そういえばスプリガンはダンジョンアタックを得意とする種族だった、と思いだす。主に一人の黒いプレイヤーが、そんな使い方をしていないのがいけないのだが。
「そうですよね……スプリガンって一人で突っ込んで、そのまま一人で敵を全滅させてくるような種族じゃないですよね……」
「お、面白い友達がいるんですね……」
しみじみと語るシリカにシウネーからきたフォローが痛い。そう言われれば、その面白いスプリガンの友達の奥さんは、並みの前衛なら歯が立たないようなウンディーネのヒーラーなのだが。今更ながら友人たちの不具合っぷりを感心していると、洞穴の声から更なる音が響き渡った。
これは風の音ではない。正真正銘の人間の悲鳴だ。
「な、何? 今の悲鳴?」
「おねぇちゃんの声だ! やっぱりお化けに食べられちゃ……」
「急ぐわよ!」
どんなダンジョンかと思っていたが、中は洞穴らしく一本道。それはノリの魔法でも確認しており、道中に敵がいないか確認しながらも、パーティーは全速で洞穴を駆け抜けていく。
「エメリちゃん、お母さんはどんなお化けって言ってた?」
エメリの手を引くシリカが聞くと、エメリは記憶を探るような表情になるものの、喉まで出掛かっているが思い出せないらしく。正式名称ではなく断片的な名前しか答えなかった。
「クラ……ラケ? とかそんな感じ」
「クラーケン!?」
そんな断片的な情報だったが、このALOの元となったかの北欧神話に詳しいリーファは、そこからある怪物の名前を類推する。確かに海の魔物といえば有名な存在だが、こんなクエストのボスになるような格ではない。
「あんなの、このALOならとんでもない強敵の筈だけど……」
「でも、確かみたい……だね」
始めての曲がり角。その向こうにいるであろう化け物の影が、シルエットのようにこちらに映っている。影だけでも巨大だと分かるソレは、柱と見まがうほど太い何本もの強靭な足を持ち、パーティーを待ち構えるように蠢いている。その雰囲気は確かに、海の魔物の代表格とまでなった伝説の怪物、クラーケンに相応しい。
「本当のクラーケンでもやることは一つ、ってね!」
「ノリの言う通り、関係ないわ! クラーケン
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