第九十三話
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少し調子を崩されてしまった、NPCの少女――エメリとずっと遊んでいたシリカも問う。
「あっち!」
エメリが向こう――どこか遠くを指差していき、それに釣られるようにシリカもその指を見る。狙ったかのように人間がいないその方角は――人気がないともいう――店やNPCの姿もなく、最終的にたどり着いたのは謎の洞窟。海岸沿いで終わるようなクエストだと思っていたシリカは、その巨大なモンスターがまるごと入りそうな洞窟に少し冷や汗をかく。
「そ、そう。あそこかぁー。……間違いない?」
「うん!」
恐る恐るリーファがそう聞き返すと、満面の笑みでエメリは同じ答えを返す。えー……嘘でしょー――などとリズは呟くものの、NPCがそんな意味もない嘘をつく筈もなく。裏切られる系のクエストならばともかく、この無邪気にシリカと戯れる少女がそうだとは思いたくない。
「よ、よし! 早速行こっか!」
「ええ、でもユウキはお留守番ね」
「何でさ!?」
頑張って場を盛り上げようと声を張り上げたユウキに対して、今までずっと場を見守っていたシウネーが声をかける。その理由は簡単なことであり、シウネーは顔を笑みのまま、無言でユウキの腰にかかった剣を指した。先程のデュエルの影響で、直角に折れ曲がった片手剣を。
「その剣じゃ、いざという時戦えないでしょう?」
「う〜」
「そうそう。ま、アタシたちに任せて、ユウキはタルに剣直してもらってきなよ」
「むむむ〜」
まるでクワのように刃が変形してしまった剣では、流石に満足に戦うことも出来ず。ユウキ本人もそれが分かっていて口をつぐみ、半ば面白がっているようなノリが追い討ちをかけると、ユウキの不満げな言葉にならない言葉がさらに紡がれる。
「ちょっと待っててよ! 絶対、その子のお姉ちゃんはボクが見つけるんだからね!」
そう言い残すや否や、ユウキは翼を展開すると最高速でどこかに向かっていく。その速度は言葉をかける暇もなく、まさしく神速の速度というに相応しい。ノリはどんどん遠ざかっていくユウキに口笛を吹くと、待たせてしまっているリズたちにそう告げる。
「それじゃ、クエスト行こっか!」
「いいの!?」
あっけらかんと笑うノリに対してリーファが反射的にツッコミを入れるものの、本人は大して気にすることなく「いいのいいの!」などと言ってのける。エメリの先導で砂浜の人気から離れていき、シリカたちも一瞬顔を見合わせた後、仕方なしにそちらについていく。
「時間がないのも、あの剣じゃ危ないのも確かですから。まあ、すぐ追いついてきますよ」
「そういうものですかね……?」
シリカは心配そうにユウキが飛び去っていった方角を見て、そういえば向こうはショウキさんが
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