ほのかな香りと優しい苦味
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ん、ほのかはすきだよ」
「ことりも!」
「あ、ありがとう……」
「だから、そんなかっこいいうみちゃんがしたいことして遊んで、ほのかたちもうみちゃんみたいにかっこよくなるの」
「ことりも、うみちゃんがしたい事したいなぁ」
「ねーねー、いいでしょー」
「で、でも……」
「うみちゃん、おねがい」
「うう、ズルいよ…ことりちゃん」
「わーい、じゃあ何して遊ぶー?」
「えっと……じ、じゃあ……」
人付き合いが苦手、言い方を変えれば自分の殻に閉じこもってしまう性格の私にとって、その光景は実に新鮮だったと同時に、憧れた。
あの子のように、人を惹きつけるような踊りがしたい。
あの子のように……
「自分の気持ちを素直に出せるような、そんな友達が欲しい」
「そうだな。友達ってなぁ人によって価値観はバラバラだ。だから、そこには絆ってのが大切になってくる」
「絆、ですか」
「英玲奈はそのA-RISEを通じて、他の二人との間に絆は生まれてると思わないのか?」
「うーん」
厳しい練習、手に入れた栄光、次への目標。
それらで得たものは、確かに私だけのものではない。今ならほんの少しだけ、そう思える気がした。
そうか、これがきっとアンドリューのいう絆というものなんだろう。
やはりツバサやあんじゅは私にとって、友達でも親友でもない、彼女らは戦友だ。
今はまだ、それでいいと思う。
ただ今までと違うのは、その戦友という言葉の持つ意味についてだ。
まぁ、多分これは誰にも話す事がないだろうけど。
正直、恥ずかしいしな。
携帯が鳴る。
手に取ってみると、ツバサからのlineだった。
『ジュース奢ってあげるから、今すぐ公園に集合』
ふっ、相変わらず唐突な奴だなこいつは。
すでに珈琲を二杯も飲んでるし、別に飲みたいわけではなかったけど、私は公園へと向かうことにした。
今はただ、この戦友の顔が無償に見たくなっていたのだ。
「ありがとう、お陰でなんだかスッキリしたよ」
「良いって事よ。今度遊びに来る時は、他の二人も連れてきな。うちのカミさんも喜ぶだろうし、特製の料理をご馳走してやるよ」
「そうか。ああ、楽しみにしている」
「おう、またな」
いつしかくだけた話し方になっていた私に対しても、エギルは特に顔色を変えることもなく、むしろ友好的な笑みを浮かべてくれた。
会計を済ませてから外に出る。路地を通り抜ける風が、夏がそろそろ終わるのだという事を教えてくれた。
大通りに出た辺りで、あんじゅと会った。
まったく、こんな人の多いところでそんな大声を出すな。
「ん?なんか良いことでもあったの」
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