ほのかな香りと優しい苦味
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してしまいましたね」
「なに、構わねぇって。そうだなぁ……英玲奈はその二人とどうなりてぇんだ?」
「どうなりたい、ですか?」
「ああ」
「そうですね……やはりもっと高みを目指していきたいと思います」
「ま、そう言うだろうなとは思ったけどよ」
「どういう事ですか?」
彼の問いかけに対しては、今のは正しい回答だったと思う。
ツバサとあんじゅとどうなりたいかと問われれば、私はもっと高みを目指していきたいと心の底から思っているし。彼女らもそう思っているはずだ。
これは私個人の考えではなく、確信だ。
事実、ツバサの次のライブに向けての意気込みは、正直私も気圧されるほど強いものだし、あんじゅだって見た目こそふわふわとした印象だが、人一倍努力家だ。
今後のことなんか聞かれたって、そう答えるに決まっている。
しかしアンドリューの反応は、私がまったく的外れな回答をしているかのような反応だった。
また、その的外れの回答をすることも見越しているような素振りをする。
では一体、彼は私に何を求めているというのだろうか。
「あのよぉ、その高みを目指したいってなぁA-RISEでの目標であって、お前個人の気持ちって訳じゃねぇと思うんだ」
「な!?私の考えなのだから、私の気持ちじゃないか!」
途端口調が荒くなってしまう。
大きな声(といっても、そこまで大きくはないが)に自分自身が驚いてしまう。
やってしまった。
初対面の、ましてや相談を乗ってもらった相手に対して、なんと失礼な態度を取ってしまったのだろうか。
私は後悔の念に押しつぶされそうになりながら、アンドリューに謝罪しようとして、ふと奇妙な感覚になる。
というのも、アンドリューは怒るでも呆れるでもなく、笑っていたのだ。
「あ、あの……」
「そぉいうので良いんじゃねぇか」
「どう、いう……事でしょう」
「ようは自分の気持ちに素直になれってこった」
自分の気持ちに素直になる事。
その言葉は、ごく当たり前で、とても簡単で、私がもっとも憧れていた事なのかも知れないと思った。
あの日、母親に連れられて行った日本舞踊の道場で会った女の子の事を思い出す。
「うみちゃん、今日は何してあそぶー?」
「ほ、ほのかがしたい事でいいよ」
「えー、ダメだよー。今日はうみちゃんがしたいことして遊ぶのー。ねー、ことりちゃん」
「うん、ことりもうみちゃんがしたい事だったら、なんでもしていいよ」
「は、恥ずかしいいよぉ」
「むー、さっきはあんなにかっこよくおどってたじゃーん」
「うんうん、かっこよかったよー」
「そ、そうかなぁ」
「うん。どうどうとしてるうみちゃ
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