ほのかな香りと優しい苦味
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ど。
「ああ、うみちゃんおわったー?ねぇねぇあそぼー」
「ほのかちゃんダメだよぉ、勝手に入っちゃ」
その子の友達だろうか。まるで太陽のように明るい笑顔の女の子と、小鳥のように綺麗な声のした女の子が二人、道場へと入ってきた。
母親は苦笑いを浮かべながらも、優しく「いってらっしゃい」とその子を友達二人の元へと促す。
先ほどまで不安な表情を浮かべていたその子も、友達二人の元へ行った途端に笑顔を浮かべていた。
年相応の、可愛らしい女の子の笑顔だ。
その日の出来事は、私にとっては割と重要な意味を持つことになった。
人前で踊るという事と、そして……
「ん?こんなところに喫茶店なんかあったんだな」
物思いに耽りながら街を歩いていると、ふと一軒の喫茶店が目に留まった。
看板には『ダイシー・カフェ』と書いてある。
ここらで一息入れるのも悪くないと思い、私は店の扉を押した。
店に入ると先ず目に入ってきたのはカウンター、次に数人が座れる大きな丸いテーブルがいくつか並んでいて、奥には年代を感じさせるジュークボックスが置かれている。
内装はお世辞にも綺麗とは言えないが、一目で私はこの店が気に入った。
可愛いものも人並みには好きだが、どうやらこういう雰囲気のほうが性に合っているらしい。
以前に一度、ツバサとあんじゅと三人でカフェに行った事がある。
そこは女子高生の間では人気の店で、中でもそこの巨大パフェが絶品なんだとか。
ラブライブに優勝した自分たちへのご褒美としてそれを食べに行ったのだが、店内に入って早々にファンの子達に騒がれてしまい、結局食べないままその店は出てきてしまった。
以来私は、ああいう人の多いところに対して抵抗を感じるようになっていた。
スクールアイドルとして知名度が上がった証拠ではあるし、注目されるのは悪い気分ではない。
が、やはり苦手なものは苦手なのだ。
「おう、いらっしゃい。なんだ珍しいな、あんたみたいな女の子がこんな寂れた店に来るなんて」
「そうですか?私はこういった雰囲気のお店は好きですが」
「はは、そいつぁ嬉しいね。じゃあ、こちらへどうぞ。お嬢さん」
店の店主だろうか。
私は促されるままに、カウンターの椅子に腰を掛けた。
「それで、ご注文は?言っちゃなんだが、意外と味には自信があるんだぜ」
「では……珈琲を一つ、ホットで」
「あいよ」
接客業などは詳しくはないが、ここの店主はそういった意味ではむいているかどうかと問われれば微妙なところだ。
百八十センチはある体躯は筋肉と脂肪にがっちりと包まれ、その上に乗った顔は悪役レスラーさながらの、ごつごつとした岩から削り出したかのような造作だ。髪型もつるつるの
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