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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
星降る夜に、何想う
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 惹かれ合うみたいに。
 目や耳といった感覚器が顔にあることを、マサキは人生で一番恨めしく思った。もし末端に付いていれば、今すぐにでも切り落としてやれるのに。そんなものが頭部にあるから、人はそれを切り離せない。例え切ったとしても、落ちていくのは脳みその方だ。

「……マサキ君?」
「何故だ」

 心配するようなエミの声を、マサキは努めて遮ろうとした。それでも耳に入ってきてしまうソプラノを掻き消すようにマサキは続ける。

「何故俺なんだ。今日だけじゃない、家にまで押しかけてくる日、食事を作ってくる日、フィールドまで付いてくる日――誰かと一緒に食事したければシリカがいるだろう、誰かと一緒に外に出たければアスナがいるだろう、いや、他にだって、お前と一緒に行動したがる奴なんてごまんといる。なのに何故、何故尽く俺なんだ――!」

 息を荒げて吐き捨てたマサキは、同じ言葉を何度も何度も、オーバーヒートした思考回路に流し続けていた。
 誰かと一緒にいるような人間ではないのに。
 それができるような人間でも。
 なのに、何故――

「……分かんない?」

 同じ単語を何万回数えただろうその瞬間、まるで天使の奏でるハープのように涼やかに震えたエミの声が、熱暴走を起こしていたマサキの頭を急激に冷却した。突然我に引き戻されたマサキは、本来必要な思考力さえ失って、今まで必死に遠ざけてきた彼女を振り返ってしまう。

「何……っ――!?」

 そして、振り返ったマサキの数センチ先――震えただけで触れてしまいそうな距離に、彼女の瞳があった。
 システムが彼女にだけ特別製のプログラムを使っているのではないかと勘繰ってしまうほど美しい、宝石のような瞳。潤んだ表面に覚悟の光を宿したその中で、一瞬で吸い込まれてしまったマサキがひどく怯えていた。

「本当に、分かんない?」

 繰り返された言葉は、現実のものだっただろうか。それすら分からない中で、しかしマサキは確実に理解していた。
 彼女の言う言葉。瞳に浮かんだ感情。
 それを告げられた時、自分は間違いなくその重みに耐えられないと。
 ――止めてくれ。
 マサキは力の限り叫ぶ。しかし、どれだけ力を込めても唇は微動だにせず、掠れた息しか出てこない。既に、重圧で喉が潰れていた。
 エミに抱かれた右手に、彼女の手が添えられる。
 ――止まってくれ。

「……わたしね、ずっとマサキ君のことが――」

 頼む――!
 両目を硬く閉ざして念じた瞬間、それまで全く力の入らなかった左手が反応した。マサキは咄嗟にその手をエミの肩に添えて引き剥がすと、絡め取られていた右腕を抜きながら飛び退くように立ち上がる。

「え……」

 彼女が言おうとしていただろう最も重要だった言葉は、音になる
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