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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第210話 救えた命
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銀行強盗の男が、1人の郵便局員の男を射殺した後、奥にいた女性職員か、自分の母親か、どちらを撃つか迷いをみせていたその時に、詩乃は飛びかかって拳銃を奪い――引き金を引いた。
そう、あの時の職員が……目の前の女性 祥恵なのだ。
つまり、この女性と引き合わせる為に、隼人や和人、明日奈、玲奈、里香達は、あの町の郵便局へと行ったのだ。既に職を辞していた女性の現住所を調べ、連絡し、この場所で……と理解出来たが、その理由が判らなかった。
「……ごめんなさい。ごめんなさいね、詩乃さん……。私、あなたともっと早くにお会いしないといけなかったのに……、謝罪も……お礼すら言わずに……」
大粒の涙が、祥恵の目から流れ落ちた。
詩乃は、どうして謝られているのかが、まだ判りかねていた。
そして、祥恵は隣の三つ編みにした瑞恵の頭をそっと撫でながら、続けた。
「……あの事件の時、私、お腹にこの子がいたんです。だから、詩乃さん。あなたは、私だけでなく……、この子の命も救ってくれたの。……本当に、本当にありがとう。ありがとう……」
その言葉。意味。全てが詩乃の頭の中を巡った。
「…………命を…………救った………?」
そして、最後には、ただ その二つの言葉を繰り返していた。
あの郵便局で、11歳の詩乃は、拳銃の引き金を引いて、1つの命を奪った。
それだけが、詩乃がしたことだった。今までずっとそう思ってきた。
――――でも、……でも。
今、眼前の女性は、確かに行った。
《救った》と。
「オレも、言われたことがある」
不意に、隼人が口を開いた。祥恵にも負けない程、震えを帯びた声で。
「『誰かを助ける為にした事。でも正当化するつもりはない。ただ、失ってしまった。奪ってしまった。……それと同じくらい、助けた、助かった人たちのことも考えてみろ』……そう、言われたんだ。自分を責め続けていたことは、オレにも判る。……罰そうとした事も。でも、救った人たちの事を考える権利だってあるんだ。それを、考えて……これは、決して正当化じゃない。それでも、詩乃には、自分を……赦す権利が……ある、って事を……」
そこまで言って、もう言葉がでなくなったかの様に、隼人の口から言葉が出る事は無かった。
詩乃は、隼人が言っている事理解する事が、出来た、出来た気がした。だから、何かを言わなければ、と祥恵の方をもう一度見た。それでも、なにを言えば良いか、何を考えてすらいいのかわからない。
とんっ。
と、小さな足音がした。4歳の女の子、瑞恵が椅子から飛び降りて、詩乃の傍へと来ていた。……ピンク色の頬はふっくらとして、大きな瞳はこの世の何よりも純粋な光をたたえている。
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