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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 3
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の土地でもなければ、相続した店でもない。
 マリオンは、何者かから借りた場所で、細々と商売していた。
 貸り店舗の個人経営でよくある現実……それは!!

『長らくのご愛雇ありがとうございました。当『ベーカリー・マリオン』は閉店とさせていただきます……』

「マーリーオーン────ッッ!!」

 うきうきと辿り着いた、元店先。
 貼り紙の前に崩れ落ちて絶叫した俺を、誰が責められるというのか。
 否! 誰にも責められやしない!

 こんなに絶望したのは……生まれて初めてかもな……。
 くっそぅ、マリオンめぇええ……っ!

「これだから人間は…… んん?」

 ボロボロ溢れる涙を腕で拭いつつ、立ち上がって。
 もう一度貼り紙をよく見ると、下方に続きの文章がある。
 なになに?

『……なお、店主マリオンは実家にて職人を継続します。ご縁があればまたお会いしましょう。 元店主マリオン』

「って、どこだよ実家ぁあああああ────ッッ!!」

 住所くらい書いておけよ!
 昨今、どんな人種でも、職種でも、過剰なくらいの親切心を見せないと、誰も付いて来ないんだぞ!?
 アイツ、顧客をおちょくってんじゃねーのか!?

「職人を続けるなら、実家もパン屋なんだろうが……」

「ーーーーー?」

「あ?」
「ーー、ーーーーー?」

 まったく見も知らない、髭面(ひげづら)恰幅(かっぷく)の良い男が、さっぱり通じない言葉を振り撒きながら、身振り手振りを交えて何か伝えようとしてる。

「?? 解らん」
「ーーーーーーー。ーーーー!」

 一声発したら、いきなり笑って肩を叩き。
 そのままどっかへ歩き去った。

 なんだありゃ。
 まさか、俺を心配してた? のか?
 変な人間……

 …………ぅん? あれ?
 そういや、俺……

「マリオンとは普通に話してたよ、な……? …………ほぅわっ!?」

 瞬間。
 俺は脳天に雷が直撃したかの如き、天性の閃きを開花させ。
 散らばってた断片を、頭の中で一枚の絵に昇華させた。

 見えた。
 マリオンの実家はあの場所にある筈だ!
 てか、他の場所にあるとは考えにくい!
 マリオンの類稀なる才覚。
 ()()()()で磨かれたのだとすれば、納得もいく。

「くっくっくっ。この俺が易々と諦めると思うなよ、マリオンンン……? 今度こそ絶対に、師匠と呼ばさせてもらう! 覚悟しておけーっ!!」

 人の視線を避け、建物の影に入り。
 周囲をよく確認して、街を言葉通り跳び出した。
 あっという間に小さく離れていく街を背に。
 目指すは、クロスツェルの教会があった王国、アルスエルナ。
 クロスツ
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