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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 3
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 「!」
 パッ、と腕の内からロザリアが消えた。草山並ぶ草原もガラッと様子を変える。
 此処は……街か?
 石造りの建物に、商い用の鉄看板が種種様様と並ぶ狭い通り。商売時間が過ぎてるのか人影は無く、ちょっと薄暗い。
 ……目を覚ましたロザリアに吹っ飛ばされたか。
 「チッ。もう少しだったってのに。まぁ良い。居る場所は判って……」
 …………ん?
 待てよ、この建物群……見覚えがあるぞ。
 看板の配置とか、色とか、建物の特徴……
 「ハッ!! 此処は……マリオンが居る街じゃないか!?」
 そうだ。
 此処を真っ直ぐ抜けて、大通りを東方面に向けて歩いて……おおお! 間違い無い! 確かに『ベーカリー・マリオン』が構えてる街だ!
 ロザリアのヤツ、俺の記憶を視て飛ばしたのかなんか知らんが、ナイスチョイスだ! 素晴らしいッ!!
 「わざわざ跳んで来る手間が省けた! レゾネクト関係は片付いたし、ロザリアを狙うバカもクロスツェル以外はいない。早速マリオンに……」

 が。
 俺は甘かった。砂糖よりも甘かった。
 『ベーカリー・マリオン』の経営スタイルをよく思い出して欲しい。
 ……そう。
 『テナント』。『貸り店舗』だ。
 貸りた店舗。つまり『自分持ちの土地』でもなければ『相続した店』でもない。
 マリオンは細々と個人で商売していた。
 貸り店舗の個人経営でよくある現実……それは!!


 『長らくのご愛雇、ありがとうございました。ベーカリー・マリオンは閉店とさせていただきます……』


 「マーリーオーンーーーッッ!!」
 うきうきと辿り着いた元店先。
 貼り紙の前にぐしゃりと崩れ落ちて絶叫した俺を……誰が責められると言うのか。
 否! 誰にも責められやしない!
 こんなに絶望したのは……生まれて初めてかもな……。
 くそぅ……マリオンめぇ……ッ!
 「これだから人間は…… んん?」
 ボロボロ溢れる涙を腕で拭いつつ、立ち上がってもう一度貼り紙をよく見ると、下方に続きの文章がある。
 なになに……
 『……なお、店主マリオンは実家にて職人を継続します。ご縁があればまたお会いしましょう。 元店主マリオン』
 「……って、何処だよ実家ッ!!」
 住所くらい書いておけよ!
 昨今、どんな人種でも職種でも、過剰なくらいの親切心を見せないと誰も付いて来ないんだぞ!!
 アイツ、顧客をおちょくってんじゃねーのか!?
 「職人を続けるなら、実家もパン屋なんだろうが……」
 「ーーーーー?」
 「あ?」
 「ーー、ーーーーー?」
 全く見知らない髭顔で恰幅の良い男が、さっぱり通じない言葉を振り撒きながら身振り手振りを交えて何か伝えようとしてる。
 「?? 解らん」
 「ーーーーーーー。ーーー
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