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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 3
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 コイツ、なんか鈍いっつーか、微妙にトロくせえな。

「……お前は、まだ殺して欲しいのか」

 俺の周りの空気が入れ替わった感覚。
 新しい風で浅い呼吸をくり返し、耳に入る声を確かめながら言葉にする。

 音に関わる空間を遮断した状態だと、自分の声なのに、他人にはもちろん自分にも聞こえなくなるらしい。
 ただでさえ、邪魔者扱いで吹っ飛ばされてムカついてたのに、怒りを発散させる叫び声も聞こえないとか! 余計に苛立ったぞ、こんちくしょう!

「いいえ。私には生きなければいけない理由が出来たから。まだ死ねない。でも、貴方には私を殺す理由と権利がある。今なら、私が同意さえすれば、私の人格だけを消滅させられるでしょう?」
「レゾネクトが退いてるからな」
「ええ」

 コイツがアリアでいる間に死ねなかったのは、契約を通してレゾネクトに意識を見張られてたせいだ。
 多分、自分で死のうとしても、誰かに殺されようとしても、事故か何かで偶発的に死にそうになっても、その全部をレゾネクトが防いでた。
 レゾネクトと契約する前まで時間を巻き戻して生じたロザリアの意識は、レゾネクトが教会に現れるまで通じてなかったんだろう。
 でなけりゃ、俺には手出しできなかった。
 腹立つけどな!

 経過を見れば、別人になれば死ねる可能性は確かにあったと言える。
 結果は失敗だが……今のレゾネクトなら、邪魔はしない。
 おそらくマリアの想いを念頭に置いた上で、アリアの意思を優先する。
 事故死はともかく、自殺や他殺を受け入れるかどうかは、コイツ次第だ。
 しかし!

「面倒くせぇ!」

 確かに、忌々しくて鬱陶しくて憎くて、今でも殺してやりたい。
 俺に施したあの封印、最初は俺と同系統の力で構成されてると思ってた。
 だから、女神(コイツ)を殺せば拘束力も消える、解放されると。

 なのに、実際は鍵付きの放置型だったとか!
 あの時点で本当にロザリアを殺してたら、力を蓄え終わるまで自ら半永久投獄状態だぞ!? 気付いた瞬間にどんだけ焦ったと思ってやがる!

「お前を殺してスッキリしたいってのに変わりはないが! クロスツェルの阿呆に無限に説教されるのはゴメンだ。死にたくなったらまず最初にヤツを説得してこい! 納得させてきたら、ちゃんと殺してやる!」

 アリアがきょとんと瞬いて、笑う。

「とても難しそうね」
「知るか! てめぇで決めたんなら必死で我を通せ。結果は与えてやる!」

 俺はアリアなんぞ知ったこっちゃない。
 ロザリアがロザリアのままであれば、他は二の次、三の次だ。
 行く先にロザリアが居なければ、クロスツェルとも再契約はしなかった。

「出会った当初も感じていたけど。貴方、悪魔にしては変わって
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