5部分:第五章
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第五章
「けれど次はな」
「一番力の強い奴なんだろ?」
「ああ」
一難去ってまた一難というわけだった。ピンチは続いていた。
「あの高校の主砲さ」
「主砲か」
「抑えられたらいいんだけれどな」
皆また不安な顔になるのだった。そのバッターがバッターボックスに入るのを観ながら。
ところがであった。ここで誰かが言った。
「大丈夫だよ」
「大丈夫!?」
「ああ、安心していい」
その彼はこう言うのだった。
「あのバッターにはな」
「何でなんだ?」
「左だからだよ」
彼は言った。
「あのバッターが左だからだよ」
「それがか」
「左対左だ」
一三が左だから必然的にそうなる話だった。
「だったらな」
「勝てるっていうのか」
「左対左は」
その彼はさらに言葉を続ける。
「ピッチャーの方が有利になるんだよ、大抵はな」
「大抵?」
「何でだよ」
「左から投げるだろ?だったら左のバッターボックスからはボールが見えにくいんだよ」
視覚的な問題だった。
「それに右ピッチャーの方が多いだろ」
次に言う問題点はこれだった。
「だから。左ピッチャーには馴れていないからな」
「だからか」
「右バッターならまた違うけれどな」
ただ単に右と左ということではないのだ。そこには大きな違いがあるのだった。
「だからな。ここは」
「近藤に有利か」
「それにあいつは左バッターに特に強い」
今度は一三自身の特性だった。
「だからな。絶対にいける」
「よし、じゃあここは」
「あいつに任せるか」
「信じる」
こうまで言う者が出た。
「あいつをな。それじゃあな」
「見せてもらうか」
ここでは彼等は腰を据えて見ることにした。こうして一三とそのバッターの勝負がはじまった。まずは彼はストレートを投げた。
それはバッターの内角低めギリギリに入った。バッターは身動き一つできない。その判定は。
「ストライク!」
「よし!」
「まず一球!」
一三の高校側から歓声が起こった。
「いいコースに入ったな」
「ああ、相手は手も足も出なかったな」
「いけるか?やっぱり」
その左対左ということがそれぞれの脳裏に浮かんだのだった。
「ここは」
「抑えられるか」
「いや、あと二球」
ここで楽観論を戒める言葉が出された。
「あと二球ある。だから」
「これからか」
「ああ。あと二球」
またこのことが言われたのだった。
「まだどうなるかわからないからな」
「しかしな」
「しかし?」
「やれる」
それでも一三を信頼していたのだった。誰もが。
「今のあいつならな」
「あのバッター、抑えられるか」
「まずな。だからここはな」
「見るか」
「ああ、見守ろう」
ここで
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