2部分:第二章
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第二章
こうして二年が過ぎた。五年になった彼に監督はある番号を与えた。
「一番ですか」
「頼むぞ」
彼にその背番号を与えたうえでにこりと笑ってみせたのだった。
「この番号はわかるな」
「はい」
一番の背番号が何なのか、最早言うまでもなかった。
「それじゃあ僕が」
「エースだ」
そういうことだった。
「頼んだぞ。マウンドはな」
「わかりました」
こうして彼は正式にエースになった。その左腕から繰り出されるホールは小学生としてはかなりのスピードでしかもコントロールもよく殆どのチームを完封に抑えた。そのあまりもの実力に早速有名になった。六年になった時にはもうスカウトが家にまで来るようになっていた。その人達は口々に言うのだった。
「その左がね」
「是非うちの学校で」
「僕の左ですか」
大人にまで言われて意識しない方がおかしかった。
「僕の左腕が」
「そう、その左をだよ」
「是非うちの学校でね」
「どうかな」
こうした感じで次々に声がかかるのだった。
その言葉を受けて戸惑わない筈がなかった。しかしここで監督は彼に対して言うのだった。
「驕るな」
「驕るな?」
「自分を偉いと思うな」
こうも一三に言うのだった。
「いいな」
「偉いと思わないんですか」
「絶対にだ。怪我をしないことも大事だがそれも大事だ」
「自分を偉いと思わない」
自分でも言う一三だった。
「それですか」
「御前の左は凄い」
このことは監督も認めることだった。
「しかしだ。それでもだ」
「それを偉いと思わずにですね」
「投げろ」
今度はこう告げた。
「いいな。投げろ」
「投げるんですか」
「怪我をせずにだ」
怪我についても注意することも忘れない。何処までも一三のことを思っているのがわかる。彼は本当に彼を大事に思っているからだ。
「投げ続けるんだ」
「わかりました。それじゃあ」
「中学はまずは御前の行きたいところに行け」
「行きたいところにですか」
「高校もだ」
高校についてもだった。
「御前なら何処にでも行ける」
「僕は何処にでも」
「そして勝てる」
勝利についても信頼していた。何処までも一三の素養を高く買っていたからだ。
「御前の左でな」
「じゃあ僕は」
実は彼は中学は地元の中学に行きたいと思っていたのだ。そしてそこの野球部に入るつもりだった。高校のことはまだ考えてはいなかったがとりあえず中学はそのつもりだった。
「自分の行きたい中学に行きます」
「そうしたらいい。そしてそこで野球をやれ」
「はい」
「そこに道がある」
今度は道という言葉を出してみせた。
「御前の道がな」
「じゃあ僕このまま道を歩いていきます」
一三は監督のその言葉を聞い
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