第169話 襄陽城攻め2
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に正宗は眉をしかめた。この時間に正宗に言づてなどまともな内容でないと感じたのだろう。
「甘興覇、外では何だ。中に入ってこい」
正宗は甘寧に寝所に入るように促した。すると彼女はいそいそと正宗の寝所に入ってきた。彼女は正宗の前まで進み出ると片膝を着き目を伏せ拱手した。
甘寧は正宗に孫堅が襄陽城を夜襲することを報告した。正宗は報告を聞き終わると渋い表情を浮かべていた。甘寧は片膝をつき、正宗の様子を伺っていた。
「夜襲だと」
正宗は険呑な声音で短くつぶやいた。甘寧は正宗の顔を窺い彼が喋り出すのを待つ。
「孫文台は正気か?」
正宗は怜悧な瞳で甘寧を見下ろした。彼の雰囲気は孫堅の行動を快く思っているようには感じなかった。
「孫文台様は本気で襄陽城を攻めようと考えております」
甘寧は正宗の質問には答えず、主人の意思のみを正宗に伝えた。正宗は甘寧の態度に気分を害す素振りを見せなかったが視線を甘寧から逸らし彼の陣所の天幕を凝視した。純白の天幕は小さい灯りの火を受け、淡い橙色に染まっていた。
「孫文台は死ぬやもしれんぞ」
正宗はしばし考え込んでいたが呟くように言った。
「文台様は危険は承知の上と申しておりました」
「孫文台がどうなろうと知ったことではない」
正宗は甘寧を睨み付けた。
「文台様は清河王に名誉を挽回したいだけでございます」
「そう思うならば地道に襄陽城を攻めろと孫文台に伝えおけ」
正宗は甘寧に命令したが彼女は動く様子はなかった。孫堅の命令を受け正宗の元に来た以上、正宗に孫堅の作戦行動の許可を得る必要があるからだろう。
「清河王、文台様は名誉挽回の機会をこの一戦に賭けております」
甘寧は淡々と目を伏せ正宗に意見した。正宗は彼女の言葉に沈黙した。彼は一瞬眉根を寄せるも直ぐに平静になった。
「孫文台はちと功を焦りすぎているようだな」
甘寧は正宗に何も言わなかった。彼女も正宗の意見と同じ考えなのだろう。その焦りの一旦は正宗との隔意にあることも。だが、それは切欠であり一番の理由は蔡瑁軍にいいようにあしらわれ、武侠としての体面を潰されたことへの怒りが一番だといえる。
「私にも責任の一旦があるようだな」
正宗は憂えた。
「いいえ。清河王に非はございません。本日、荊州の豪族達が居る前で失態したことが堪えられなかったのだと思います」
甘寧は正宗を気遣った。責任の一旦が正宗にあることは事実だが、今回の孫堅の決定は彼女自身が決定したことである。一軍の将が自ら決断したことは将個人の責である。甘寧も武官に身を置くものとして、それを心得ているからこそ正宗を責めようとは思わなかった。
「甘興覇、今より互いに話すことは、この場限りの
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