第169話 襄陽城攻め2
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「流れを変えるための犠牲を最小限にするにはこれしかないということか」
正宗は朱里から視線を逸らし独白した。それを朱里は黙って聞いていた。
「その策に乗ろう。しかし、少々人使いが荒いな。主君を寡兵で洛陽に送り込もうとはな」
正宗は笑みを浮かべ朱里を見た。だが、その表情は非難めいたものでなく、戦を前に昂揚している戦士のものだった。
「策は万端を期すつもりでございます。董少府が正宗様を亡き者にするため襲撃した際、正宗様が冀州まで逃げる段取りは整えておきますのでご安心ください」
朱里の言葉に正宗は少し考えると何か思いついたのか口を開く。
「并州の鮮卑族を利用するつもりか? 合力の対価は高くつくと思うがな」
「鮮卑族は自分達の利を保証すれば文句はいわないと思います。以前、鮮卑王より鮮卑族の有力者の子弟を冀州へ遊学させたいと打診があったはず。これを条件にしてはいかがでしょうか?」
正宗はしばし朱里の提案を思案した。
「交渉役は誰にする?」
正宗は鮮卑王に足下を見られて不利な要求をされると困ると考えているようだった。
「揚羽殿が適任かと。彼女であれば鮮卑王も正宗様が遊学に乗り気であると印象づけることができると思います。真悠(司馬季達)も副使として立てれば、彼女の面目も立つと思います。正宗様の許可をいただければ、直ぐにでも早馬を揚羽殿に出させていただきます」
「進めてくれ」
「かしこまりました」
「董仲穎が私の襲撃に失敗した場合、彼女は次にどうでると見る?」
「涼州に逃げ帰るという選択はないでしょう。正宗様を襲撃した段階で董少府は全てにおいて終わります。彼女達が都を去れば、次に待つのは粛正です。少なくとも董少府が王司徒の上位に立つため、賈文和はかなり強引な方法をとるかと」
「通常の方法では無理だろうな。皇帝陛下と百官の同意を得るのは不可能だ」
正宗は険しい表情で朱里を見た。彼はある可能性を思い描いているようだった。劉弁の廃位だ。百官を押さえつけて実行に移すとなれば血の雨が降るのは明かだ。それに劉弁の身もどうなるかわからない。
「皇帝陛下を廃位するかまでは分かりませんが、皇帝陛下には董少府が上洛する前からの側近が居るため傀儡にするのは困難でございましょう。正宗様と決定的な対立を行った後となれば尚更のことです。側近は正宗様に付きましょう」
「となれば賈文和が次の皇帝に据えようと考えるのは陳留王か?」
「傀儡にするには彼女ほどの好人物はおりませんでしょう」
朱里も後ろ盾のない劉協を賈?が傀儡の皇帝に推戴すると考えているようだった。
「陳留王が自分の兄を蔑ろにした賈文和を許すとは思えんがな。彼女は皇帝陛下を兄と慕っている。それに彼女は信の通った人物だ。賈文和の脅しに
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