第31話
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「やっぱり、水関の突破は難しそうね」
「ああ、正面から馬鹿正直に攻めれば痛い目を見るだろう」
「そこを守る華雄将軍含め、兵士達の士気も高いそうです」
連合の陣から少し離れた見晴らしの良い丘、そこに陣を張り終えた孫呉の総大将孫策と、その頭脳たる周瑜、軍師見習いの呂蒙の三人が水関を遠目で窺っていた。
「まぁでも、私達には水関は関係ないものね」
「その通りだ。精々他の諸侯達に奮戦してもらおう」
「私としては向こうが気になるわ」
「ん? ああ、袁紹軍か……」
水関のみならず連合全体を見渡せるそこから、孫策は袁の軍旗がはためく陣営を指差す。
「陣の形成がやたら早く感じたんだけど……これって何気に凄いことよね?」
「『凄い』の一言では済まされんぞ。あの速度は異常だ」
「大軍は鈍足なのが基本です。速さをかね添えた大軍なんて、敵に回したら大変ですよぅ」
「『袁家の常識は非常識』とは、よく言ったものね……」
目にする度に常識を覆してきた袁紹軍、ここまで来ると感心を通り越し呆れてくる。
しかし、ここで思考を停止させないのが有能な将、孫呉の者達だ。
孫策は、自分達の独立の大きな壁になるであろうその軍を見つめ闘志を燃やし。
周瑜は、袁紹軍の隙を見つけようと頭を回転させ。
呂蒙はその軍の特性、自軍に応用出来るものは無いかと、陣営のみならず兵の一挙一動くまなく観察した。
「袁紹とは黄巾の時以来ね……」
「…………」
「冥琳?」
「ああ、あの時の借り、倍にして返す時がきた」
「はぁ……なんか冥琳が自信満々だと、嫌な予感がするのよね」
「どういう意味だ!」
まるで黄巾の時のようなやり取り、周瑜の表情に不安を覚える孫策。
彼女の辛辣な言葉を受けたものの、周瑜は改めて宣言した。
「あの時とは違う。今日こそは私が……奴を手玉に取る!」
「キャーやっぱり冥琳カッコイイ!」
「こ、こら! 引っ付くな雪蓮!!」
「わわわ、雪蓮様大胆です〜」
もうすぐ戦にも関わらず、孫呉の者達に余計な緊張は無い。
百戦錬磨な彼女たちにとって、戦場の空気は慣れたものだ。唯一見習いである呂蒙は少なからず緊張していたが、孫呉の軍師に見出された事もあり、肝は据わっている。
「ッ!? ……お客のようね。多分三人」
「え? あ、本当ですね」
突然身体を緊張させ、真剣な表情になった孫策に軍師二人は驚いたものの、それが来客の知らせと知り安心する。
後ろを振り向くと此方に向かって歩いてくる人間が三人。距離はまだ遠く、顔は良く見えない。
気配どころか足音すら聞こえない距離で気配を察知した孫策。その武人の範疇を超えた勘働
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