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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 23.
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常時存在していた。
 奇しくもロイドは、今それを認めた事になる。
「次元獣についての詳細なデータは、常時優秀な研究機関に提供してもらっているんだ。その研究は、今後も専門家達に続けてもらうよ〜」対するロイドも意味深だ。仄めかしている機関が、ブラスタとクロウにデータ収集を行わせているスコート・ラボである事は明らかだというのに。「ただ、今回の騒動は過去に例の無いものだよね。知りたいな〜。君達が何を握っているのか」
「まさか、それを言う為にわざわざここに来たの?」
 いぶかしげに尋ねるミヅキだが、邪険な態度を取る事まではしない。
「まさか」とロイドが肩をすくめた。「君達が来るなんて知らなかったよ。だってここには、もう何も無いじゃない」
「じゃあ、何をしに来たの?」
 いぶきが問いかけ、直後に馬鹿な事をしたと後悔する表情に満ちた。第2皇子シュナイゼルの信用も厚い特派のリーダーが、国が敵と定めているZEXISに隠密行動の目的をぺらぺらと話す訳がない。
「ついでに寄ってみただけだよ〜。ちょうどバトルキャンプに向かう途中だったから」
「えーっ!!」
 いぶきとミヅキ、大山の驚声に、デュオの素っ頓狂な声が重なった。
 ロイドという男の発想は、時に常識を無効化する。まるで朝の散歩の話をするかのように、ブリタニア・ユニオンの名を背負ったままZEXISの拠点の一つバトルキャンプに向かうと言っている。
 国連平和維持理事会との関係が密なバトルキャンプに、ブリタニア帝国貴族の威光は働かない。しかも、次元獣やZEXIS機の秘密に目を輝かせている技術者ならば、尚の事他の機体周辺に出没されては困る。その辺りの駆け引きで、前回の合流時にイアンや厚井達を消耗させたというのに、何とこの男は再びZEXISとの共闘をもちかけるつもりでいるのか。
「なぁスザク」赤木が思わず、かつて共闘したランスロットの操者に呼びかけた。日本人でありながら帝国に仕え目指すものを掴もうとしている少年の誠実さに、元々赤木達は好印象を抱いている。「本気なのか? ロイド博士は」
 スザクの視線が、巧みにZEXISのメンバーを避けた。
「僕に訊かないで下さい」
 返答の内容を予測しつつ、ミシェルはセシルに笑顔を向ける。頭の回転の早い美女が、「私からお話できる事は何も…」と上官を立てた笑みをこぼす。
「納得した〜?」ロイドが、ここぞとばかりに話をまとめようとする。既にこの場は、男のペースで全てが進んでいた。「ところで、君達は何をしに来たの? 事態は収拾して、安全宣言も出した場所に。気になるな〜」


              − 24.に続く −

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