月下に咲く薔薇 23.
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り俺達を騙しやがったのか!?』
罵るウィッツの声が聞こえているのだろうに、アイムが『それでは始めましょう』と何食わぬ様子でクロウをアリエティスの胸部パーツの上に立たせる。『私は伝えた筈ですよ。バトルキャンプ上空で行う、と』
『確かにそうだけど、敵襲と同じじゃないか。こんなやり方』
露骨に不満を漏らすゲイナーに、『相手はアイムだぜ。期待しすぎだろ』とアルトが横やりを入れる。
コートのボタンをかけながら、クロウは敢えて仲間の機体と下方の景色に目をやった。
風が弱くなったのは幸いだ。陽光を浴びれば、僅かばかりの暖を取る事ができる。
下方には、海と陸地の境目が不規則な線として最奥まで続いていた。岬全体を利用しているバトルキャンプと、その半面を囲む海。段差があるので、基地上空に留まっているクロウには、バトルキャンプ以上に海が遠い。
人工物と岩、海のほぼ3色だけとそっけないが、開放感が強く悪くはない景色だ。
もし踵を返した時、あの赤いハゲ頭が巨顔を自分に向けていなければ。おそらくは、もっと穏やかな気持ちになれるだろうに。
『いいわ。始めてちょうだい。…気をつけて、クロウ』
「ああ」スメラギの声に短く応答し、「だとよ」とアイムに呼びかける。
深く息を吸って、腹に力を入れた。
クロウがブーツで踏みつけている胸部パーツから、赤い光が滲み出た。発光の原理は、ブラスタに搭載されているVXとほぼ同じ筈だ。
天秤座機ブラスタの胸部が黄色系の光を放つのに対し、牡羊座機アリエティスは禍々しい赤い光を放つ。
今のところ、昨日指先に感じたような痛みは体の何処にも感じない。アイムが慎重に進めているからか。或いは、正に今何かが準備されつつある瞬間故か。
不意に、足の裏が何も感じなくなった。
冬の外界も消滅する。視界は黒に傾いた赤一色で、濃淡はなく全体が透明度を持つ鈍い明るさに満ちている。
落下の印象は垂直方向で、またも足から落ちてゆく。
但し、アリエティスから振り落とされたのではないようだ。自由落下よりももっと緩やかな移動は、切り裂いている筈の外気を肌に刺してはゆかなかった。
これは、アイムの仕業なのか。
インペリウムの支配空間に、ZEXISはクロウただ1人。
やはり騙されたのかもしれない。
* * *
一方、昨日の行動を再現すべくショッピング・モールに向かったミシェル達だが、12時が近づこうという真昼時にもかかわらず未だ施設内に入る事ができなかった。
駐車場入り口のゲートは閉じたままで、ゲート前に置かれた立て看板には「本日の営業は、午後1時からとなります」という内容が詫び文と共に綴られている。
「あちゃー」デュオが頭をかく横で、「せめて車だけでも出させてもらえないかしら」と琉菜
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