月下に咲く薔薇 23.
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帝国。今どちらがZEXISの脅威であるかを我々に伝えたいのならば、証明するしかあるまい。ブラスタを一切頼りとせず、我々の組んだ接触計画にも穴を開けぬよう、最高の結果を出してみせろ』
「そうですか」しかし、アイムも怯まなかった。全てを正面から受け止め、眉間に皺を寄せつつ色の違う両眼に強い光を宿す。「いいでしょう。しかし、これは国連軍たるZEXISと私の正式な取引です。甘受するからには、当然相応の報酬を私からも要求します」
『報酬だと? 勘違いするな。お前は既に望みを言っているのだから、了承した段階で取引は成立だ。クロウが元の状態に戻る事をお前は希望した。敵の身でありながらクロウに接触し望みを叶えるのだから、文句はあるまい』
「更に、もう1つ。先程私が要求した、明日行われる感応接触の立ち会い許可を」
『だめだ。接触に立ち会う者は、侵入などせずともバトルキャンプに滞在する事を許された人間だけだ。お前はそれに相応しくない』
「ほぉ」
たった一声に、アイムの怒りと敗北感が混じる。あくまで排他的な態度を貫くゼロに、今は退くしかないと悟ったのだろう。
「では、見事クロウ・ブルーストから異物を取り出し、ZEXISの信用とやらを得る事ができるよう努めましょう」
表向き虚言家も納得し、両者による交渉は成立した。
『クロウ。お前も、決定事項に異存は無いな?』
形ばかりの事後承諾に、「ああ」と短く答えておく。先程の会議で、この身の使い方は上が決めてくれと進んで提案したばかりだ。指揮官がその権利を行使しているのなら、従うより他にあるまい。
「クロウ・ブルースト」ロックオンが掲げる携帯端末から向き直り、アイムが柔和な笑みを送って寄越す。「嬉しく思いますよ。あなたの存在に手をかける事ができる機会を、ZEXISが正式に用意したのです。これも、私とあなただけが特別であればこそ」
「よせ。ストーカー野郎がそういう話をすると、洒落にならねぇだろ」遅ればせながら、その時クロウはようやく理解した。自分は、『偽りの黒羊』のスフィア搭載機とパイロットに命と体を預ける話に同意したのだ、と。「言われた事だけきっちりこなすんだな。出来なきゃ、その場で笑い飛ばしてやる」
虚勢を張ってから、虚言家を信用する事が如何に困難かをクロウは思い知った。
今のアイムには、ゼロ達ZEXISの指揮官が押しつけた不利な条件を克服して見せたいとの思惑がある。アリエティスの持つ鋭利な刃で突然五体を切り刻んだりはしないと思うが、人は日頃の行いによって語られる。何をどう定義しても敵にしかならないこの男に、自分をどうこう出来る機会を与えてしまった事自体が途方もなく不快だ。
「では、5分後に滑走路でお会いしましょう」
言うが早いか、アイムの姿は突然消えてしまった。
「ちっ!」と、五飛が険しい表情
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