月下に咲く薔薇 23.
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「え…?」
誰もが意表を突かれた。
当然の反応だ。驚かない方がおかしい。その存在を知っていながら、正体どころか潜伏場所さえ特定できなかった異界の異物。それを、牡羊座機と専属パイロットだけで体内から取り出して見せると豪語したのだから。
自信のある素振りから、普段多用している転移能力の応用で試行するつもりなのだろう。ジェフリーの言う読み違いが発覚してから、アイムにとって最大の関心が再接触から多少逸れているのがわかる。
そこまで躍起になる動機ならば見当がついた。おそらくは再接触時、自分以外のスフィア所持者が体内に爆弾を抱えていると敵前で大変都合が悪いからだ。
クロウとブラスタのみをZEXISから引き離し、虚言家は青い異世界でスフィア・リアクター2人だけによる何かを実行するつもりでいた。いや、まだその企みを捨ててはいないかもしれない。
昨夜、生身のクロウを青い異世界から救い出したアリエティスだが、操縦者は本人も知らぬまま大きな危険と背中合わせの救出劇を演じていたようだ。当時の危険度の高さに気づき、アイムは平素の顔を浮かべつつ偽りの下で焦燥している。
本当に可能なのだろうか、アイムとアリエティスには。
もし、異物を取り出せるのならZEXISには大きなメリットが生まれる。機体、パイロット、母艦、基地とそれぞれに残されてしまった敵の痕跡を1つでも取り除く事ができれば、何らかのバランスを崩し、敵の狙いから自分達を解放する事ができると思われるからだ。
ZEXISが計画している再接触の際、クランと中原を危険に晒すのはクロウの本意ではない。ましてや、それがランカに起きるなど論外中の論外だ。
作戦前に、件の異物を取り出す。
アイムの提案は、クロウのみならずZEXISの中に急速に浸透した。意識から意識へと伝わって広がる甘美で舌触りの良い毒のように。
「目を覚ませ!」ロックオンが背後で肩を掴みながら、クロウを思考の世界から強引に連れ戻す。「いい加減に学べよ。またご丁寧に聞いてやってるぞ」
「あ…、ああ」
我に返った途端、方便の可能性に思い至った。迂闊にも期待してしまい、落胆の憂き目に遭っている自分がここにいる。
クロウは、心の中で自身の頬を叩いた。
「また騙されるところだったぜ。ま、明日のコンタクトにこいつは必要かもしれねぇ。親鳥よろしく暖めておくさ」
むっとするかと思いきや、アイムがおやおやと肩をすくめる。
「取り出して使えば良いではありませんか」
「へ…?」
「歌とサイコミュの併用で成果を上げる事が狙いなら、わざわざ体内に留まらせておく必要などない筈です。損傷の激しい滑走路にでも直接置いて使う事をお勧めしますよ」
意外にも正論を持ち出され、今度はクロウの方が戸惑った。
「…アリかよ。出して使う、とか」
「聞
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