ターン38 変幻忍者と黄昏の隠密
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「さて、と。じゃあ聞かせてよ、何やらかしたのさ一体」
「やらかした、って……先輩じゃないんですから。まず、これを見てください」
レッド寮食堂、食卓机にて。なぜかどんどん人が集まってきたこのボロ家で、葵ちゃんが丁寧に折りたたまれた1枚の紙を広げた。もっとよく見ようと、部屋の中にいる全員の視線が一斉にその紙に集中する。まったく、元はといえば相談されてるのは僕なのに。皆デリカシーがないというか、野次馬根性旺盛というか。
『でも立場が違うならマスターも同じことするんだろう?』
「(うん。だから何も言わないの)」
まあそれはどうでもいい。いま大事なのは、アカデミアの民度の問題ではない。その手紙はなかなかの達筆だった。字が若干丸みを帯びているところを見ると、差出人は女性らしい。少なくともレッド寮だけ見ている限り、男にこんな字は書けんよ。
「んーと?『お久しぶりです、マイシスター。あなた入学してから年に一回は実家に顔出すって言いましたよね?いつまで経っても手紙の一枚も送ってくれないので、お姉ちゃんもう辛抱たまらなくなってしまいました。いつの間にか可愛い男の子とも仲良くなっているみたいだし、そこの話も含めてまた今度、なんてのんびりしたことは言わずに今日会いましょう。この学校の灯台あたりが目印には良さそうなので、場所はそこ。時間は黄昏時、風邪ひかないように格好には気を付けて来てね。お姉ちゃん待ってまーす』」
「私の身内の恥、何も音読することはないじゃないですか先輩……」
「うん、今のはちょっとデリカシーなかったかな、ってさ」
「え、僕が悪いの?」
穴があったら入りたい、といった顔の葵ちゃんと呆れ顔の夢想にたしなめられ、なんだかこっちが悪いことをやらかしたような気になってくる。助け舟を出してくれたのは、葵ちゃんとは同学年なこともあって割と話す機会もある剣山だった。
「それにしても、お姉さんなんかいたんだドン?」
「ええ。認めたくはないですが」
そのあたりで室内の視線が僕の方へ向いたのを感じ、何か聞かれる前に先手を打って答える。
「僕も初耳だね。別に隠すようなことでもないだろうに」
「なんでこの身内の恥をわざわざこんなところに来てまで拡散しなくちゃいけないんですか。あの人のノリは私が生まれて16年間というもの1度たりとも馴染めなかったんですよ……」
「あー、確かにこんな感じの軽いタイプ苦手そうだもんね、葵ちゃん」
「どちらかというと、この人がトラウマになってるんですがね。とんでもない天才タイプで、何やらせても私を軽く上回るところがまた」
これは面白い話だ。僕のレシピを片っ端から吸収する手際といい成績の高さといいデュエリストとしてもかなり上位な、まさにくの一と呼ぶべき身体能力といい、ぶっちゃけ葵ちゃん
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