第十四話「モンド・グロッソ」
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当たらない。
――千冬も居ないとすると……
自販機で缶コーヒーでも買いに行ったか? いや、きっと寮の外だ。
「……」
彼は寮周辺を歩き回った。やがて、寮に近い広場から話し声が聞こえてきた。ヴォルフは、気配を殺すと隣の木々に身を潜め、耳を傾けた。
「……考え直してください!」
「……」
何やら、ラウラは必死に千冬を説得しているが、千冬は聞く耳を持たないでいる。
「ここは、教官が居るに相応しい場所ではありません! ここに居る連中は、ISをファッションか何かと勘違いしています……」
「だからといって、教員としてここを離れるわけにはいかん」
「こんな極東の国に居座り続けたら、貴女の本質が発揮されません!」
――あのチビ!
ヴォルフは、先ほどからラウラが発言する言葉に苛立ちを覚えた。誇り高いドイツ軍人であるなら、ISの発祥国である日本を「こんな極東の国」と見下す発言はしないはずだ。まだ、彼女が若いというのはいざしらず、国を守る戦士達は祖国に恥じぬよう関係に悪化のない他国に対してそれなりの弁えを持たなくてはならない。それが、大人だろうが子供だろうが関係ない。
「いつからそんな立派な口を叩けるようになった? 小娘……」
勿論、千冬も出過ぎたラウラの態度に苛立った。
「し、しかし……!」
「とにかく、私はこの学園の教師を続ける。それをお前に否定される筋合いはない!」
「きょ、教官!」
「ここに居る時の私は教員だ。『教官』ではない!」
と、気を悪くしたのか、千冬は先に寮へ戻った。
――なるほど……そういうことか?
ラウラが、何故このIS学園へ来た本当理由が何となくわかった。しかし、いくら恩師の教官とはいえ、今のラウラは単なる乳離れのできないヒヨッ子だ。
――ラウラ・ボーデヴィッヒ、ドイツの代表候補生であり、IS配備特殊部隊「黒兎」の隊長を務める優秀にして冷酷な「生体兵器」。しかし、ブリュンヒルでこと、「織斑千冬」の存在により所々に難があり。軍人として、否……誇りを持つ戦士としての存在は「無用」なり。よって、これよりラウラ・ボーデヴィッヒを「戦士の面汚し」と改め、早急に抹殺する……!
戦士としての名誉と誇り、そして何よりも騎士道と武士道を重んじるヴォルフにとってラウラの存在は許しがたいものであった。
彼による、ラウラ抹殺はすぐそこまで迫ってきていた……
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